不妊治療を経験した妊産婦の個別ニーズに応じた助産ケア評価尺度の開発を目的とした。平成28年度に不妊症看護認定看護師有資格助産師にインタビューした内容から倫理的側面を重視し、不妊に特化した助産ケアを抽出して倫理的実践質問紙を作成した。 平成29年度までに本質問紙を用いて、全国の助産師の実践頻度と関連要因を探索することを目的とした調査を実施した。倫理的実践質問紙は尺度として一定の信頼性妥当性が確認された。質問紙調査の結果より、不妊治療後の妊産婦への助産ケアにおいては、知識だけでなく助産師が倫理的感受性を育むことの重要性が示唆された。また実践に活かすため、より具体的なケア指標の必要性を検討した。 平成30年度はケア指標作成に向けて、助産師の実践内容に当事者の視点を反映させるための意見聴取を行った。不妊治療後に妊娠出産を経験した母親4名を対象とした。特に重要視していた内容は、①不妊治療から出産後までの移行プロセスの継続的なサポート、②妊娠中の不安への対応、③通常のケアにおける細やかでさりげない配慮、④当事者の選択を肯定すること、⑤不妊治療の経過に関する理解と共有、であった。不妊治療経験を振り返ることについては要、不要および時期についてもそれぞれの意見があり、個別対応において検討する必要があると考えられた。これらの意見を取り入れ、今後は具体的で実践可能な助産ケア指標の作成と、倫理的側面を含めた助産師への教育プログラムの開発を行う予定である。
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