研究課題/領域番号 |
16K15963
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
渡辺 陽子 (半田陽子) 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 講師 (20364119)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 認知症高齢者 / 自己決定 / 看護介入 / アクションリサーチ |
研究実績の概要 |
平成29年度は、①スタッフによる日常的な自己決定支援が認知症高齢者とスタッフ双方に及ぼす効果を検証する②認知症看護認定看護師の看護職との連携方法について明らかにする、という2点を実施した。 渡辺は平成29年度までに、介護老人保健施設で生活する認知症高齢者16名に対して、スタッフ27名(看護職9名・介護職18名)の協力を得て、生活における自己決定支援介入を実施している。スタッフは、介入実施者であり研究対象者である。認知症高齢者への介入の効果としては、介入前後の前頭葉機能検査(p=0.007),精神機能障害評価票(p=0.014), QOL評価尺度(p=0.005)の有意な改善が認められた。介入を実施したスタッフの効果としては、介入前後の労働感情尺度の「患者へのネガティブな感情表現」が低下傾向(p=0.079)にあったが、共感経験尺度などの変化はなかった。支援実施についてのスタッフアンケートより、支援の良さを感じながらも、多忙な業務の中での支援継続の難しさを感じていたことが伺えた。これらから、自己決定支援は認知症高齢者の精神、生活によい影響を与えるが、継続的な自己決定支援の実施により認知症の人を取り巻く環境の変化までを目指すためには、臨床現場で支援を実施するスタッフが主体となって、より実践可能な方法を検討することの必要性が示されたと考える。 さらに、認知症看護認定看護師と、その他の看護職との協働のあり方を知るために、認知症看護認定看護師1名に対して面接調査を行った。その結果、看護実践を他看護職に伝えるために認定看護師は、他の看護職自身に実践・体験してもらうための支援、成長を促すための環境調整などを実施していることが示された。認定看護師と他の看護職との連携方法を知ることで、臨床現場で自己決定支援をすすめていくための示唆を得ることができると考え、次年度は追加の面接調査を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は、研究グループの立ち上げまでを行う予定であった。しかし、研究グループの立ち上げには至っていない。 本研究は、臨床看護師との協働によって、実践現場に変化をもたらすことを目指す研究である。それゆえに、共同研究者となる臨床看護師のみではなく、勤務するすべての看護職の同意を得ることが必要不可欠である。しかし現時点では、全てのスタッフの積極的な参加を得るまでの関係性構築が期待できる協力施設を確保することができていない。よって、当初の計画と比較し、やや遅れていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、まず、認知症看護認定看護師との面談を行い、主に生活援助を担っている職種である看護職・介護職との協働を図る上での課題や、具体的方法を抽出していきたいと考えている。同時に、研究チームの立ち上げに向け、臨床現場との連携を図っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、研究チーム立ち上げに向けた施設との打ち合わせ、勉強会の開催などを考えていたが、それに至らなかったため、特に旅費・謝金の使用額が少なかった。
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