研究課題/領域番号 |
16K15969
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
林 みつる 昭和大学, 保健医療学部, 講師 (20300402)
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研究分担者 |
岡田 忍 千葉大学, 大学院看護学研究科, 教授 (00334178)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 高齢者 / ドライスキン / 皮膚角層水分量 / スキンケア / 洗浄方法 |
研究実績の概要 |
高齢者は皮膚機能の恒常性が低下しているとされることから、保水の継続性を検証するために、洗浄後120分までの皮膚水分量および皮膚pHの経時的変化を測定し、皮膚への影響を検討した。 【方法】対象は健康で皮膚に異常を認めない若者とした。実験側[A]は足浴器から下肢を出さずに温湯内で泡洗浄し、対照側[B]は足浴器から下肢を出して泡洗浄した。皮膚状態は膝蓋骨骨尖15cm下の皮膚角層水分量・pHを測定した。測定は足浴前、洗浄後10分から120分の計6回行った。データは平均値±標準偏差で示す。A側とB側ならびに足浴前と経過時点の差の検定にはWilcoxonの符号付き順位検定を用い、p<0.05で統計学上有意とした。【倫理的配慮】倫理委員会の承認を得たうえで口頭および資料表示にて研究説明を行い同意を得た。【結果】被験者は6名(平均年齢32.2±10.9)。Ⅰ.皮膚水分量:洗浄前は、A側34.1±9.8、B側34.2±9.4だった。洗浄60分後はA側30.7±9.2、B側29.7±7.2、洗浄120分後はA側29.7±8.0、B側30.1±8.6だった。洗浄前と比べて、洗浄60分後はA側(p=0.03)とB側(p=0.05)、洗浄120分後はA側(p=0.03)に有意差を認めた。Ⅱ.皮膚pH:洗浄10分後はA側4.0±0.4、B側4.3±0.6、だった。洗浄前に比べてA側は洗浄10分後に有意差を認めた(p=0.05)。 【考察】湯の中で洗浄を行うと、浴用手袋の摩擦が過度に加わり皮脂膜や角質層が除去され、皮膚からの水分蒸散が亢進することが推察される。A側は皮膚水分量が足浴前の状態に戻る兆しは洗浄後2時間では認められず、時間単位で皮膚の乾燥が進む可能性がある。皮膚機能の恒常性が低下している高齢者は皮膚の乾燥が助長されるおそれがあり、洗浄方法や洗浄後の皮膚の保湿に留意する必要があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、訪問入浴サービスを利用している要介護高齢者のドライスキンを助長しない入浴ケアを検討することを目的としている。本年度は、洗浄方法の皮膚への影響について基礎的データを収集することと並行して、訪問入浴サービスを利用する要介護高齢者のドライスキンの特徴を明らかにして皮膚のアセスメント指標を作成することを目的に、居宅介護支援事業所や訪問入浴サービスステーションに伺い、本研究への協力依頼活動も行った。 やや遅れている理由として、①事業所責任者は研究の意義や計画に理解を示していただけるものの、サービス利用者の紹介の段になると難航した。②調査期間や時間に余白が少ないうえ複数関係者の日程調整を要することから、活動成果が想定以上に得られない状況があった。しかし、協力依頼は1事業所ごとに研究への理解と協力意思を確認し、コンタクトを重ねながら真摯に取り組むことが対象獲得につながると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
訪問入浴サービス利用者の紹介までは至らなかった(難航する)ものの、サービス従事者である事業所の責任者は、入浴ケアの意義、サービスの質の向上をめざす観点から研究への理解は得られていた。引き続き、事業所への訪問を重ねて研究協力への依頼活動を実施していく。加えて、アプローチする人物(方法)として事業所責任者だけでなくケアマネージャーについて検討する。 「要介護高齢者」という括りで云えば、介護保険施設を利用している高齢者も皮膚トラブルを抱えるリスクは高い。訪問入浴サービス利用者と同様に、皮膚のコンディション(角層水分量やバリア機能)を明らかにする意義があると考える。故に、研究対象者として協力を依頼し、差異を考察しながら、皮膚アセスメントの指標の作成をめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:謝金等において、被験者数が計画予定数よりも少なかったことがあげられる。資料整理等に人件費を計上していたが、己が取り組んだため、残高が生じた。 使用計画:研究組織の人員を募り、データ収集体制を整える。研究協力の同意者を得るための事業所への訪問やデータ収集のための人件費および調査費、研究の遂行やデータ分析の精度を上げるために研究会議を設ける。
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