大洋州では肥満、糖尿病、高血圧症などの非感染性疾患が深刻な問題となっており、運動療法が必要とされる治療のひとつである。しかし、大洋州のような高温多湿の熱帯性気候下にある中で、また住民の一部には裸足で歩く習慣もあり、屋外での運動療法の実施は困難と考えられていた。またそれに加えて住民の運動療法への理解と普及のためには、子どもの時からの習慣や認識が成人に引き続くため、子どもへの働きかけが鍵を握ると考えられた。 これらを明らかにするために、本年度は前年度末の第2回のトンガ王国エウア島において行った調査の中で、患者6名、医師1名、看護師3名を対象とした半構成的面接調査結果をKJ法を用いて質的に分析した。その結果、調査対象者はいずれも日々の運動の必要性は理解しており、特別なプログラムでの運動よりも、日常的に行っている農作業やウォーキングなどにより毎日身体を動かしていた。また音楽に合わせて踊るズンバと呼ばれるフィットネスプログラムを好んでいた。この地域では、医療職や宗教関係者が運動プログラムの普及に影響を与えていることがわかった。一連の調査を通じて大洋州の一国の一部地域であるが、そこにおける運動習慣や運動についての認識が明らかとなり、今後の大洋州に適した運動プログラムの開発と普及には環境や文化的要因の考慮が重要であると示唆された。また、現地調査の際に学校での運動指導を試みていたが、その反応をもとに好まれる運動のあり方についての検討を行った。今後は子どもや成人に好まれる運動指導案のさらなる検討が望まれる。
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