研究課題/領域番号 |
16K15984
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
杉田 由加里 千葉大学, 大学院看護学研究科, 准教授 (50344974)
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研究分担者 |
石川 麻衣 高知県立大学, 看護学部, 講師 (20344971)
井出 成美 千葉大学, 大学院看護学研究科, 特任准教授 (80241975)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 後期高齢者 / 健康増進 / 保健指導 / アセスメント / 地域看護 |
研究実績の概要 |
健康寿命の延伸に向け、高齢者個々がその時の状態に適した保健行動がとれるよう、支援者は的確にアセスメントし、高齢者が主体的に保健サービスを利用できるよう、また、自らがセルフケアできるようサポートしていくことが重要と考える。 本研究は、後期高齢者の保健行動全般を捉える上で有用とされる、国際生活機能分類の考え方を基盤としながら、後期高齢者の保健行動を捉える上での具体性を有するアセスメントガイドを作成することを目的とする。健康寿命の延伸を謳っている厚生労働省との政策とも合致しており、後期高齢者を対象とした健診の事後フォローを確実に実施する上で、保健指導の実践への活用が期待できると考える。 本研究におけるアセスメントガイドとは、保健指導を展開する上で最初に実施するアセスメントにおいて、身体・心理・社会的側面から網羅すべき項目を把握する際、配慮すべき留意点を示したものである。 平成28年度は全市区町村を対象とした後期高齢者の健診と健診後の保健指導の実態調査についてまとめ報告した。有効回答数は1,006件(57.8%)であり、後期高齢者健診は946件(94.0%)で実施されていた。健診後の保健指導は336件(33.4%)で実施され、639件(63.5%)は実施されていなかった。ほぼすべての自治体で後期高齢者の健診は実施されていたが、健診後の保健指導に関しては、約60%が実施されていなかった。健診を受けた後、高齢者各々が社会資源を活用しながら、自らに必要な保健行動ができるよう、保健指導をうける機会を充実させていくことが必要であると示唆された。 次に、後期高齢者の保健行動全般を捉える上で必要とされるアセスメントガイド案を作成するために、先駆的に後期高齢者の健診後に保健指導を実施している自治体の従事者へのインタビュー調査を実施した。2か所の調査を終了し、さらに調査を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
後期高齢者の健診後の保健指導の実態調査にて、健診後の保健指導は336件(33.4%)で実施されており、そのほとんどが自治体直営で実施されていた。健診後の保健指導は必ずしも受診者全員を対象としているわけではなく、また、受診者全員を対象とした保健指導を実施していても、グループでの保健指導となっていた。高齢者各々が適した保健行動をとることにつながる保健指導内容を詳細に明らかにする必要性を確認した。 先駆的に後期高齢者の健診後に保健指導を実施している自治体の従事者へのインタビュー調査では、事例報告ではあるが以下の点が明らかとなった。 A市は人口約3万人、高齢化率23.6%の関東地方の市であり、健診後の保健指導は、市直営の地域包括支援センターの保健師が実施する体制をとっていた。保健指導の目的を脳卒中予防とし、保健指導は予約をせずに訪問するという方法をとっていた。対象者の全体像を捉えるための工夫として、「訪問目的を伝えた際の反応から受け入れ状況や健診結果への思いを推察し、保健指導内容を組み立てる」、「生活習慣病に関することだけでなく、まずは気になっている症状について傾聴する」等を実施していた。 B県高齢者広域連合は500万人を超える人口、高齢化率25.9%の県であった。保健指導は糖尿病の重症化予防を目的とし、通知後に予約し訪問する形式としていた。工夫点としては「夫婦の場合は夫婦一緒に説明する」、「1日のスケジュールを面接の中で聞き、書面に落としながら確認する」等を実施していた。 両自治体とも訪問という手段をとり、生活習慣病の予防という主目的にとどまらず、まずは対象者が気になっていることを確認し、関係性をつくることを配慮していた。家族の同席を求めたり、1日の生活全体が正確に捉えられるようにも工夫していた。さらに、調査事例を増やし、アセスメントガイド試案を作成する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
1.専門家会議による、アセスメントガイド試案の精錬 調査対象者は、高齢者への保健指導に関する研究業績を有する地域看護あるいは公衆衛生の研究者数名と高齢者への保健指導を1年以上実施した経験を有する保健師等数名、計6名から8名とする。調査方法は、フォーカスグループインタビューとする。実際に活用することを想定した際の内容の妥当性、重要性について5段階で評価し、選択理由についてコメントを記載してもらい、インタビュー当日の検討を踏まえ、アセスメントガイド試案の項目の精錬を図る。 2. アセスメントガイド試案を活用し有用性を検証 調査対象者は、後期高齢者への健診後に保健指導を実施している5か所ほどの自治体にて本事業の従事者複数名(保健師、管理栄養士)に活用していただく。事前説明会を実施し、アセスメントガイド試案の活用方法に関する知識の習得、参加者同士の演習による保健指導技術を確認する。その後、研究参加者に実際にアセスメントガイド試案を使い保健指導を実施してもらう。保健指導後にインタビュー調査を実施する。支援計画の立案、支援計画に基づき保健指導を実施し、対象者が自身の保健行動に関する目標を設定するという一連の保健指導の流れの中で、アセスメントガイド試案を活用できた場面について、また試用した際の使いづらさ、特に役に立った項目についての意見、全体をとおしての感想について聴取する。逐語録から使いづらさに関するデータを集約し、アセスメントガイド試案と照らし合わせ、文言を修正・加筆していく。活用できた場面は具体例として整理する。 アセスメントガイド試案を修正し具体例を盛り込んだ、後期高齢者の健康増進に向けた保健指導アセスメントガイドとしてまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に終了する予定であった、先駆的に後期高齢者の健診後に保健指導を実施している自治体の従事者へのインタビュー調査の調査フィールドの選定に難航し、次年度にも調査を継続する必要性が生じた。このため、その後に計画していた、アセスメントガイド試案の精錬を目的とした専門家会議の実施が29年度にずれ込んでおり、これらの調査費を29年度に執行する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
先駆的に後期高齢者の健診後に保健指導を実施している自治体の従事者へのインタビュー調査をさらに調査フィールドを増やし、継続し、「後期高齢者の健康増進に向けた保健指導におけるアセスメントガイド試案」を作成する。作成したアセスメントガイド試案を、高齢者への保健指導に関する研究業績を有する地域看護あるいは公衆衛生の研究者数名と高齢者への保健指導を1年以上実施した経験を有する保健師等数名からなる専門家会議で検討し、精錬する。 次に、アセスメントガイド試案を、後期高齢者への健診後に保健指導を実施している5か所ほどの自治体にて本事業の従事者複数名(保健師、管理栄養士)に活用していただき、有用性を検証する。活用できた場面は具体例として整理する。アセスメントガイド試案を修正し、具体例を盛り込んだ、後期高齢者の健康増進に向けた保健指導アセスメントガイドとしてまとめる。
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