研究課題/領域番号 |
16K15986
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
永田 智子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (80323616)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 地域診断 / 地理情報システム / フォトボイス |
研究実績の概要 |
1都道府県内の2基礎自治体を対象地区として、Community as partner modelを基盤とした地域診断を行った。地域診断は、分担研究者の大学の大学院生が主体的に実施した。これにより、対象地域そのものや、地域診断になじみの薄い者が新たに地域診断を実施しようとする場合に、実現可能性が高くより明瞭な結果を提示できるようにするための方法を検討することを目指した。 (1)地域のコア(人口集団)のアセスメント(GISの活用・地区踏査): GIS(Arc GIS)を用いて、地域内の人口集団の分布を俯瞰するデータを作成した。人口分布を示す方法として、小地区(丁単位)別集計、メッシュ(一辺250m正方形)別集計の2通りがある。2手法を用いて表示した人口集団分布を示す地図情報に関して、都心部の市町村程度(5km四方程度)の広さの場合、メッシュ別集計では人々の生活圏域を無視した集計となり、実際に地区踏査得た人口集団の密度・にぎやかさ等を表現できないことを確認した。 (2)地域のサブシステム(人々を取り巻く環境)のアセスメント(GIS、フォトボイスの活用):サブシステムが示す環境とは、物理的環境、経済、政治と行政、教育、安全と交通、情報、レクリエーション、保健医療と社会福祉、の8つの視点でとらえた地域環境のことである。まずGISを用いて、サブシステムに該当するデータを地図情報化し、各小地区(丁単位)を地域全体の中で相対的に評価した。その結果を受け、複数の小地区を選定した後、そこの地区踏査、およびフォトボイスによる情報収集を行った。フォトボイスでは、学生が印象に残った地区の様子を写真に撮り、それを大学で改めて教員・他学生に説明・共有することで、写真データにテキストデータが追加され、定性的データを加えた分析が可能となることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
市町村程度の自治体を対象とした場合の地域診断の中で、GIS、フォトボイスという新しい手法を用いることの意義、および活用時の注意事項等について、確認することができた。今後、こうした手法を用いて入手した情報を、地域診断全体のプロセスの中に適切に組み込むための戦略とその一般化可能性検討していく必要がある。そのためには、異なる規模の自治体単位(より広域の都道府県レベル/より狭域の日常生活圏域程度)を対象とした診断も試行していく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
(1)より広域(都道府県)の地域を対象とした診断 1 都道府県を対象とし、全体および市町単位での地域住民の人口静態・動態・疾病構造等と、資源の配置を含めた地域環境を、既存資料に基づき把握し、地理情報システムを活用して可視化する。地域保健関係者への情報収集に基づき、特に対象地域で関心の高い健康課題を取り上げて(例:糖尿病)、地域特性や資源へのアクセシビリティについて検討する。 (2)より狭域(日常生活圏域程度)の地域を対象とした診断 (1)で診断した都道府県の中で、代表性と調査への協力可能性に基づいて1~2地域(日常生活圏域・区)を選択し、その地域の地区担当制の場合に保健師が担当する広さに該当する3~4小地区を1単位として、Photovoice を用いた地区視診を行う。ここでも、1)と同様に地域保健関係者への情報収集に基づき、特に対象地域で関心の高い健康課題を取り上げて(例:糖尿病)、地域特性や資源へのアクセシビリティについて検討する。 平成28年度に実施した市町村単位の分析の結果、および1)2)から得た知見を統合し、都道府県、地域(市町村)、狭地区(日常生活圏域程度)、の3種類の単位設定ごとに、それぞれの地域診断に必要な情報の可視化・分析・統合方法を整理する。これにより、それぞれの単位設定ごとに、地域住民の健康や保健行動と地域環境との関連を把握し、健康課題の現状と課題、解決に向けた展望について考察する
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次年度使用額が生じた理由 |
近隣の自治体で研究を実施することができたことにより、交通費の支出がかなり抑えられた。地域診断には複数人が複数回現地に通って地区踏査やフォトボイスを行う必要があるが、そのための交通費が抑えられたことにより、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は広域の自治体を対象とした調査を検討しており、それにより1回あたりの交通費が大きくなる予定である。また、調査結果の発表も複数名で行うことを予定しており、学会参加による支出にも使用する予定である。
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