研究課題/領域番号 |
16K16010
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小林 佑輔 筑波大学, システム情報系, 准教授 (40581591)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | グラフアルゴリズム / 組合せ最適化 |
研究実績の概要 |
本年度の研究成果である "Covering Intersecting Bi-set Families under Matroid Constraints" では,有向木詰込み問題の拡張に関する結果を与えている.有向全域木は,根から各頂点へ向かう方向に枝を向き付けした全域木であり,1点から各頂点への情報の伝搬経路や,各地点から避難所への経路などの数学的なモデル化にあたる.有向グラフで表されたネットワークにおいて情報の伝搬経路や避難所への経路を設計する際に,ネットワークがどのくらい頑健かを表す指標として,複数の有向全域木を辺を共有しないように詰め込む問題が自然に考えられる.この有向木詰込み問題に対しては,1970年代に Edmonds によって,互いに辺を共有しない有向木の最大個数がある種の最小カット値と等しいことが示されており,最大数を効率的に計算するアルゴリズムも与えられている.この最大最小定理は組合せ最適化における古典的かつ重要な結果であり,近年では様々な拡張が研究されている.我々の成果はこれらの問題の更なる拡張に対するものであり,本研究成果は離散数学の代表的な論文誌である SIAM Journal on Discrete Mathematics に採択されている. 論文 "An improved approximation algorithm for the edge-disjoint paths problem with congestion two" においては辺素パス問題の亜種に対する近似アルゴリズムを与えている.扱っている問題はネットワーク中にパスを詰め込む問題であり,これはネットワークの頑健性を評価していることに相当する.本研究ではこの問題に対して既存の近似比を改良する結果を与えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有向木の詰込み問題は組合せ最適化における古典的かつ重要な問題である.本研究では,1970年代の Edmonds の最大最小定理から始まる一連の定理すべてを一般化する最大最小定理を与えており,この分野における重要な貢献であると考えられる.ネットワークの頑健性のモデル化として解釈できる有向木詰込み問題の理論を発展させていることから,本研究課題はおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
有向木詰込み問題以外にも,ネットワークの頑健性のモデル化として考えられる問題は連結度増大問題やシュタイナー木問題など多数考えられる.今後の研究では,これらの問題に対するアルゴリズムの理論的発展を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果の発表を,2017年度に開催される国際会議において行うため.
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次年度使用額の使用計画 |
2017年5月に開催される 10th Japanese-Hungarian Symposium on Discrete Mathematics and Its Applications への参加費用に充てる.
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