研究課題/領域番号 |
16K16010
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小林 佑輔 筑波大学, システム情報系, 准教授 (40581591)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | アルゴリズム / 組合せ最適化 |
研究実績の概要 |
本年度の主要な研究成果である "A weighted linear matroid parity algorithm" では,重み付き線形マトロイドパリティ問題と呼ばれる組合せ最適化問題に対して初めての多項式時間アルゴリズムを与えている.線形マトロイドパリティ問題は,マッチング問題と線形マトロイド交叉問題の共通の一般化として提案された問題であり,1970年代にLovaszによって多項式時間アルゴリズムが与えられた.マッチング問題やマトロイド交叉問題については,各要素に「重み」の付いた問題に対しても多項式時間アルゴリズムが知られていることから,重み付きの線形マトロイドパリティ問題に対しても同様に多項式時間アルゴリズムが存在するのではないかと長い間予想されていた.本成果は30年以上未解決だったこの問題を肯定的に解決するものである.本成果は多項式時間で解ける問題の限界を推し進めるものであり,ネットワーク上の最適化問題を含む様々な組合せ最適化問題に対する多項式時間アルゴリズムの設計に繋がり得るものである.この成果は,国際的に高く評価されており,理論計算機科学のトップ会議である STOC で Best Paper Award を受賞している. また,"Tight approximability of the server allocation problem for real-time applications" と "Complexity of the multi-service center problem" ではそれぞれある条件下で最適な施設配置を求める問題を扱っており,アルゴリズムの提案と問題の困難性の証明を行っている.これらの問題は,実問題のモデル化として生じた問題であるため,ある種の施設配置を決定する際の基礎となる成果であると考えられる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
30年以上未解決であった重み付き線形マトロイドパリティ問題に対する多項式時間アルゴリズムを与えたことは紛れもなく重要な成果である.本成果は多項式時間で解ける問題の限界を推し進めるものであると同時に,ネットワーク上の最適化問題を含む様々な組合せ最適化問題に対する多項式時間アルゴリズムの設計に繋がり得るものである.また,サーバーの最適配置を求める問題に対する近似アルゴリズムの設計や,有向点素最短パス問題に対するアルゴリズム,複数種類の施設配置問題に対するアルゴリズムなど,その他の組合せ最適化問題に対する成果も複数得られており,本研究課題は順調に進展していると判断する.
|
今後の研究の推進方策 |
重み付き線形マトロイドパリティ問題に対するアルゴリズムの研究を深め,アルゴリズムの単純化,拡張,高速化,応用について検討する.重み付き線形マトロイドパリティ問題は様々な組合せ最適化問題を包括的に含む枠組みであるため,アルゴリズムの研究を深めることは応用上も有意義なことだと考えられる.併せて,ネットワークの頑健性をモデル化することで生じる組合せ最適化問題に対して,個別のアルゴリズム設計も行う.
|
次年度使用額が生じた理由 |
スケジュールの都合上,国内出張が当初の予定よりも少なくなり(2018年1月26日に京都大学で行われたワークショップ「離散構造とアルゴリズム」など)若干の残額が残った.残額は,現在共著論文を執筆している筑波大学修士課程の高山功輝氏を訪問する際の旅費として使用する予定である.
|