研究課題/領域番号 |
16K16012
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
高澤 兼二郎 法政大学, 理工学部, 准教授 (10583859)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マッチング理論 / アルゴリズム / 巡回セールスマン問題 |
研究実績の概要 |
本年度の主な研究実績は以下の 3 件である. (1) 制約付き 2-マッチングの新たな枠組を提案した.グラフの指定された頂点部分集合の族に対し,その頂点部分集合における部分巡回路を含まない 2-マッチングである.言い換えると,巡回セールスマン問題において,指定された頂点部分集合のみに対して部分巡回路除去制約を課した 2-マッチングである.本枠組において,ある十分条件をみたす場合に対して最大最小定理・組合せ的アルゴリズム・正準分解定理を与えた.特に,5 以上の整数 k に対し,辺数 k 以下の閉路を含まない 2-マッチング問題が効率的に解くことができる問題クラスを初めて与えている. (2) 研究結果 (1) を一般の正整数 t に対し拡張し,制約付き t-マッチングの新たな枠組を与えた.この枠組は,(1) の一般化であるのみならず,辺数 3 の閉路を禁止する 2-マッチング,辺数 4 の閉路を禁止する 2-マッチングなど,既存の様々な制約付きマッチングの共通の一般化となっている.また,一般グラフのマッチングを,本枠組では二部グラフにおける制約付きマッチングで表現できることも特徴的である.この枠組において,最大最小定理・組合せ的アルゴリズム・整数性をもつ線形計画表現を与えた.これらを通じて,既存の様々なマッチングの一般化に対する包括的な理論を構築し,統一的な理解を与えた. (3) 各頂点に接続する辺数が 3 であり,任意の 2 辺を削除しても連結である正則二部グラフにおいて,最小 2 辺連結全域部分グラフ問題に対する 7/6-近似アルゴリズムを設計した. 本問題はハミルトン閉路問題の緩和問題であり,本成果は既存の近似率 6/5 を改善している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績 (1) で提案した制約付き 2-マッチングの枠組により,効率的に解くことができる新たな問題クラスを与えることに成功した.この結果を用いることにより,巡回セールスマン問題や関連する NP 困難な問題に対する近似率の改善が期待される.研究実績 (3) では,最小 2 辺連結部分グラフ問題に対し既存の近似率を改善することに成功した.これらはいずれも当該研究分野における最先端の研究成果であり,それぞれ査読付き国際会議 (MFCS 2016),査読付き国際論文誌 (Information Processing Letters) に採択されている. さらに,研究実績 (2) は様々な既存研究を包括する画期的な枠組である.巡回セールスマン問題を始めとする多くの未解決課題が残る本研究分野において,様々な既存研究を総動員した研究展開の端緒となる研究成果である.本研究分野における国際的トップカンファレンス (IPCO 2017) に採択されている.
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今後の研究の推進方策 |
研究実績 (2) のさらなる展開を進める.特に,マトロイド理論と融合することにより,巡回セールスマン問題・マッチング理論・マトロイド理論に関連する組合せ最適化問題に対する幅広い理論的基盤の構築を目指す. さらに,これまでに得られた新たな理論を近似アルゴリズム設計に応用する.巡回セールスマン問題やそれに関連する NP 困難な問題に対するアルゴリズム設計において,新たな理論を用いることによる近似率の改善を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は,当該年度の使用額と比べてごく少額である.残額を当該年度に不必要に使用するよりも,次年度予算と合算して使用する方が効率的であると判断したため,次年度へ繰り越した.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度予算と合算して,旅費に使用する.
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