研究実績の概要 |
本年度は,本研究課題の最終年度として,これまでに進めてきた研究のうち 7 篇の論文が査読付き国際論文誌に採択・掲載された.これらの論文は,そのうちの 1 篇が数理最適化の分野におけるトップジャーナルである Mathematical Programming が含まれるなど,国際的に高い評価をされた. Mathematical Programming に採択された論文「Optimal matroid bases with intersection constraints: Valuated matroids, M-convex functions, and their applications」は,共通の台集合をもつ二つのマトロイドにおける,積集合に制約をもつ基に関する最適化問題を解析したものである.先行論文では目的関数として線形関数のみが扱われていたが,本論文では非線形な凸関数への拡張を行い,扱われている問題に対する離散凸解析の理論に基づく包括的な理解を与えると同時に,より幅広い応用をもつ枠組を与えた.さらに,具体的な応用として,ロバストなマトロイド最適化,相互コストをもつ組み合わせ最適化問題,マトロイド混雑ゲームの社会的最適解を求める問題に対して多項式時間アルゴリズムを与えた. また,ネットワーク最適化に関する伝統的な国際論文誌 Networks に採択された論文「The b-bibranching problem: TDI system, packing, and discrete convexity」では,双有向森と b-有向森の共通の一般化である b-双有向森を導入し,多項式時間アルゴリズム,線形計画表現の完全双対整数性,詰込定理,M 凸劣モジュラ流表現など,組合せ最適化における基本的な定理の拡張を与えた. その他の論文もいずれも,マッチング理論やマトロイド理論を駆使することによって,有向木問題を含むマトロイド交叉問題や巡回セールスマン問題に対し,古典的結果を拡張する,一般的な理解を与える,近似率を改善するなど,マッチング,マトロイド,巡回セールスマン問題に対する理論的貢献を与えたものである.
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