当該年度では、生存時間をエンドポイントとしたシングルアームデザインのサンプルサイズ設計についての研究を実施した。本研究の成果は学術論文誌へ投稿中であり、サンプルサイズ設計を適用可能なウェブアプリケーション(https://nshi.jp/en/js/onesurvyr/)を作成・公開した。本研究では、生存時間をエンドポイントとしたシングルアームデザインの研究で標準的に用いられる、Kaplan-Meier推定量に基づくサンプルサイズ設計の方法について検討した。Kapla-Meier推定量に基づく仮説検定や信頼区間は大標本近似に基づいている。当該領域でシングルアームデザインを用いる場合は基本的に小標本の状況であり、近似の精度が大きな問題になることを明らかにした。また、検討を進める中で、既存の手法が誤った近似式に基づいていることを示し、妥当な近似式に基づく方法を複数提案した。シミュレーションで経験的な性能を検討した結果、既存の手法は第一種の過誤の確率が制御できない方法に依存しており、実際に用いる場合には注意が必要であることを示した。一方、提案した手法のうちの一つは、小標本の場合であっても適切な動作特性を持つことを示した。また、レアイベントデータにおける層別Cox回帰モデルの選択基準について検討を行い、現在論文を執筆中である。 期間全体を通じて実施した主要な研究の成果は、「レアイベントデータにおけるCox回帰モデルのAIC型・BIC型のモデル選択基準の開発」および「生存時間をエンドポイントとしたシングルアームデザインのサンプルサイズ設計方法の提案」であり、ともに実データ解析で実際に起こっている問題の解決方法を提案したものであり、重要性が高い成果である。また、実データへの適用を通じて有用性を確認しており、有意義な成果が得られたといえる。
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