本研究の主たる目的は、逐次的に治療を実施する場合の一連の治療および個々の治療の評価に際して、新規推定法を開発することにあった。まず重み付きでの並び替えを行う方法を利用した正確な統計的推測法を導入することにより、既存の推定法の欠点でもあった強いモデルの仮定・前提を必要とせずに推測することを可能とする。これによりあらかじめ仮定を置くことが難しい臨床データに対しても統計解析を行う際に必要となる強い仮定を必要としないロバストな推定量を開発する。またこれと同時にパラメトリックモデル以外でも推定可能な方法を開発する。更に本統計手法の対象とする結果変数に関しても、単純な連続量変数や二値変数であるなど単純な設定のみに限定するのではなく、より複雑なケース、特に打ち切りデータを含み、打ち切りに対する特別な対応が欠かせなくなる生存時間変数が結果変数である状況に対しても適用可能なように新規に開発した推測法を開発することを目的としている。 本年度は前年の平成30年度までの進捗に引き続いて複数の設定の下で、シミュレーションの設定を具体的に検討した上で設定し、平成30年度までに開発した推定法の性能評価を継続的に実施した。各シミュレーションの設定において、既存の推定法、すなわち強い仮定を必要とする従来の統計モデルに基づく推定量と比較して、推定における効率の改善が可能であるかを確認することを目的とした。前年度までの進捗遅延により生じていたシミュレーション評価の遅延に関しても本年度に実施した。また平成30年度までに新規開発した推定法に関して、研究の効率化を目的とした計算アルゴリズムの修正を行うことができ、更に短時間でコンピュータ演算が可能なようになった。シミュレーションの結果は、これまで通常置かれることが多く、推測法の限界にもなっていた仮定・設定に対するロバストネスについて良好な性能を示した。
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