研究課題/領域番号 |
16K16019
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
石岡 文生 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (20510770)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | スキャン統計量 / エシェロン解析 / 空間集積性 / ホットスポット / 空間線量率 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、研究計画の「エシェロンスキャン法による空間データのホットスポット検出法の発展」について、1.放射能データへの適用、2.ホットスポット検出手法の発展的展開、3.shinyによるアプリケーション化、について重点的に研究を行った。 1. 放射能データへの応用:日本原子力研究開発機構が公開している福島第一原子力発電所近隣に設置されているモニタリングポストから収集された空間線量率データに対し、空間補間法とエシェロンスキャン法を利用したホットスポット検出法について提唱し、ホットスポットの時間的な推移と空間的な分布に対する新たな知見を得た。これら研究成果をスペインで開催されたCOMPSTAT2016、アメリカで開催された日本計算機統計学会30周年記念国際研究集会などの国内外の学会、研究集会で発表した。 2. ホットスポット検出手法の発展的展開:組み合わせ集合を非常に高速に数え上げ列挙するZDD(Zero-suppressed Binary Decision Diagram)と呼ばれるアルゴリズムをスキャン統計量に応用することで、計算量の問題等から従来では実現が困難であった総当たり法によるホットスポット検出の新たな展開を図った。加えて、ZDDベースで検出されるホットスポット情報を利用する事で、各種のスキャン統計量の特性を客観的に評価するとともに、エシェロンスキャン法の優位性について検証した。これら研究成果を2016年度統計関連学会連合大会等の国内学会や、国内の研究集会で講演した。 3. shinyによるアプリケーション化:エシェロンスキャンのソフト化の実現に向け、統計ソフトのR上で実装されるshinyパッケージを用い、インタラクティブに操作可能なアプリケーションの開発を進めた。これら研究成果を日本計算機統計学会第30回シンポジウムで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度実施計画の「大規模空間データの階層構造の単純化」について、数千規模の領域からなる空間データならば、従来のエシェロンスキャン法で十分対応できることを、空間線量率モニタリングポストーデータに適用することで示した。より大規模なデータに適用するために画策していた階層構造の剪定については、そのための理論的な裏付けや客観的な根拠の明確化についてまだ整理できておらず、引き続き検討を進める。その一方で、組合せ集合の効率的な表現法に基づいて総当たり的にホットスポット検出する新たな手法についても研究を進めており、そこからエシェロンスキャン法の有効性について新たな視点で議論できものと考えている。エシェロンスキャン法のアプリケーション化については、当初の計画通りshinyによる開発を進めており、ベースの部分は実現できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、引き続き大規模空間データに対するホットスポット検出法について検討を行う。当初の計画通り、階層構造に対して剪定を行うなどの、スキャン対象の領域数を大幅に削減させる方法を開発する。これにより、従来のXY平面で表される様な地理的な二次元空間に、高度などを加えた「三次元空間」や、時間軸を加えた「時空間」などの拡張が可能となり、次元の増加に伴うデータの大規模化の問題を克服する。また、shinyによるエシェロンスキャン法のアプリケーション化について、さらなる機能拡張及び公開に向け引き続き開発を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた研究図書の購入が遅れたため、翌年度への繰越金が生じた。だが概ね当初の予定通り執行できており、研究計画に変更の必要は無いと考える。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き、国内外の学会・研究集会への旅費、および資料収集に充てる。
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