研究課題
経時的に測定されたデータから、有効な情報を抽出するための統計的モデリング手法の開発を行った。本研究では特に、経時測定データに滑らかな関数を当てはめて関数データとして処理し、関数データとして与えられた説明変数と目的変数との関係をモデル化する関数回帰モデルを構築推定する方法について研究した。関数回帰モデルに関しては、主に線形モデルの枠組みで多くの研究が行われてきた。一方で、線形の枠組みを拡張したモデルもいくつか提案されてきたが、その多くは複雑な構造を持ち、このためにモデルの推定が複雑であったり、推定結果の解釈が困難となる。これに対して近年提案された、関数データの枠組みでの二次回帰モデルは、線形モデルに比べて柔軟な予測を行うことができるほか、説明変数の時点間の交互作用を考慮に入れることができ、係数からこれらの関係性を読み取ることができる。本研究では、説明変数、目的変数が共に関数データで与えられた関数回帰モデルに対する二次回帰モデルを新たに提案した。また、モデルに含まれるパラメータを、最尤法の枠組みで推定する方法についても導出した。さらに、推定に伴う調整パラメータを、モデル評価基準を用いて選択する方法も構築した。以上の一連のモデリング手法を気象データへ適用し、時系列データとして与えられた説明変数と目的変数間の関係を表すモデルの構築を試みた。研究成果はプレプリントとして作成し、論文誌へ投稿予定である。
2: おおむね順調に進展している
モデルおよびその推定方法の構築については比較的スムーズに行うことができ、当初想定していたよりも簡潔な手続きで推定量を導出することができた。また、気象データへの適用も行い、気温と降水量の時系列データ間の関係性を浮かび上がらせることができた。これらの点から、研究の進捗はおおむね順調に進んでいると考えている。一方で、論文として投稿する上で行うべき数値実験は現在遂行中の段階である。これが完了次第論文として執筆し論文誌へ投稿予定である。
まず、今年度実施した研究の数値実験を進め、その結果を論文に加えた上で論文誌へ投稿する。当該年度に提案したモデルを一般の時系列データに対して適用しようとすると、時間の依存関係を適切に考慮に入れていないために矛盾した解釈を与えてしまう可能性があるという問題が発生する。今後の研究方針としては、この矛盾を解消するための回帰モデルの改良を行い、その推定方法を新たに開発することが考えられる。このような問題に対する、別のモデルへのアプローチとして、有限要素法を用いた方法がこれまでに提案されているが、推定プロセスが複雑な上計算コストも高い。今後は、この推定方法を改良した、より効率的な手法の確立についても検討したい。
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応用統計学
巻: 45 ページ: 25-45
10.5023/jappstat.45.25