本研究では層別化された2×2の分割表の二群比較の検定のために,有限混合モデルを用いた新たな手法に関する研究を行ってきた.最終年度における研究目標は,これまでに得られた「母集団内における真の層比率が既知の場合における有限混合モデルを用いた検定統計量の構築法」と,「層別化された2×2の分割表を用いる生存データへの検定手法への拡張」の結果に基づき,「層別化された2×2の分割表を用いる検定を利用した生存木の構築」にあった. 生存木とは木構造のモデルによってデータ(共変量空間)を分割し,生存関数が有意に異なる群へと分類する手法である.従来の代表的な分割基準には2群に対するログランク検定を用いる手法があるが,これは層別サンプリングを前提とした基準を与えることに等しくなっている.しかし生存データは層別サンプリングで集められるわけではないので,分散を低く見積もっている可能性が示唆されていた.そこで今までに得られた,有限混合モデルを前提とした分割表に対する検定法を分割基準に組み込むことで,新たな木構造の構築法を提案した. この新たな手法によって得られる木構造について,まず従来のログランク検定を用いることで得られる木構造との比較を,シミュレーションを通して検討した.加えて,実際のデータ解析を通して得られる結果を比較・検討することで,提案法によって新たなデータの解釈が可能であることが確認された. 現在,医療統計の分野ではますます生存時間解析に対する着目は高まっており,本研究により得られた結果は,今後医療データ解析の分野で役立つものと考えられる.
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