本研究課題は,状態機械として定義される一般的なサービスに対してByzantine Fault Toleranceと呼ばれる高い故障耐性を実現するためのレプリケーション技術を,クラウドインフラストラクチャ上で容易に実現できるようにすることが目的である.特に,クラウドインフラストラクチャが備える柔軟な構成管理機能を活用することで,これまで実現できなかった動的なレプリケーションの実現を目指す. 中でも本課題では,BFTレプリケーションを構築する際にしばしば問題となる,レプリカ配置の決定問題について重点的に取り組んだ.レプリケーションを構成するレプリカの位置関係は,レプリケーション自身の処理性能に大きな影響を与えることが既存研究にて指摘されているが,どのように配置すれば最適な性能を得られるのかはこれまでわかっていなかった.特にクラウドインフラストラクチャでは,「リージョン」と呼ばれるレプリカの配置先候補は十数以上もあることが一般的であるため,レプリカ配置の決定はより難しい. 本研究ではこの問題に対して,レプリケーションプロトコルのメッセージ送信パターンとリージョン間のRound Trip Timeに基づいて可能な全てのレプリカ配置のスコアを計算しランキングを作成することで,レプリカ配置の決定を容易にする手法を提案した.また,代表的なパブリッククラウドサービスAmazon Web Servicesにて実際に数千を超える様々な配置のレプリケーションを構築することにより,提案手法の有用性を実際に評価した. 当初研究実施計画では実際にレプリケーションプロトコルを設計・開発することを想定していたが,アプローチを再検討することにより,特定のプロトコルに依存しない汎用的な手法を実現できることがわかった.そのため本研究の成果は,研究実施計画と一部異なっている.
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