農業では,過去データを蓄積して生産の安定性と経営の効率を高めることが重要である.これまで,農園モニタリングの分野では過去データとして主に温度や湿度などの環境情報の収集が行われてきた.しかし,気候変動が激しい現在では,農園が想定外の環境下にさらされ,植物の環境応答を正確に把握できず,安定生産と効率的経営が難しい問題がある.本研究では,作物のリアルな状態に合わせた農園管理や意思決定といった次世代営農の確立を目指し,部位ごとの成長率や形態変化といった植物自体の環境応答を構造化して詳細に記録し,利活用を促進するベクタデータクラウドの構築を目的としている. 平成30年度においては,協力農家の農園で連続稼働させている高精細モニタリングシステムの画像から,深層学習を用いて,果実領域を抽出する手法の開発に取り組んだ.これまでは,果実の直径に関する情報の抽出に限定されていたが,提案手法では効率的な訓練データの生成手法を開発することで,数値化された果実の外形情報を詳細に抽出することが可能となった.また,移動型農園モニタリングを開発し,対象物の草丈を三次元構造に基づいて抽出する手法を開発した. 補助事業期間全体を通じては,定点型農園モニタリングシステムからの収集画像を用いて,深層学習による果実外形の数値情報の自動抽出を実現した.また,移動型農園モニタリングシステムからの収集画像を用いて,草丈の数値情報の自動抽出を実現した.
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