本研究課題は,ソーシャルメディア上で共有・蓄積されている大量のユーザ発信コンテンツの利用可能性を明らかにすることを目的としている.そのために,ユーザ発信コンテンツの欠点であるデータの欠損や曖昧性を分析し,今後の我が国の社会地理的な背景も考慮した地域情報案内などの実用的なシステムを検討する.
本研究課題の最終年度である本年度は,昨年度までに取り組んだ基盤に基づき,引き続き,ユーザ発信コンテンツの応用システムの開発に取り組んだ.具体的には,[B] 時空間コンテキストを考慮した応用システムの開発と評価について,研究開発を行なった:ソーシャルメディアにおけるユーザ発信コンテンツとして,Twitter のツイートに加えて,画像共有サイトFlickrで共有されている画像へのタグや位置ベースSNS Foursquareにおける特定の場所への訪問ログを分析し,Google Mapsなどの地図情報やストリートビュー画像の分析結果と統合することにより,地域を特徴付けるパラメーターの特徴量の推定を行った.そして,これらの特徴量を活用した2つのシステムを開発した.1つ目として,クラウドソーシングを通して収集した人々が感じている地域の環境音を,先に挙げた複数のユーザ発信コンテンツデータを用いて推定し,推定した印象環境音の大きさを可視化するシステムを開発した.このシステムは,住宅検索などにも応用できると期待される.2つ目として,ストリートビュー画像から抽出される色情報やオブジェクト情報に基づき,植物などの緑の多さに関する特徴量を推定し,2地点間の経路を心身の健康への効果という観点で検索する経路推薦システムを開発した.
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