研究課題/領域番号 |
16K16059
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
川上 朋也 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (30710470)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ルールベースシステム / 分散処理 / 計算機システム / センサデータ / エネルギー効率化 |
研究実績の概要 |
本研究では、Reteアルゴリズムに基づく分散型ルールベースシステムにおけるルール処理および処理結果のより細かい割り当て方式を提案し、構築技術の確立を目的とする。平成28年度には本研究の想定環境や問題設定をモデル化し、処理割り当て方式について対外発表を行った。設計したモデルは以下の各機器の複数台によって構成し、各機器はインターネットやLANでつながっていることを想定する。 ・Reteアルゴリズムに基づいてルール処理やデータ管理を行う「処理コンピュータ」 ・ルール処理結果に基づいて動作やサービス提供を行う「アクチュエータ」 ・処理コンピュータへ生成データ(センサデータ)を送信する「センサ」 また、ルールベースシステムではルールの条件を満たすかどうかの判別のため、センサデータの扱いが重要となる。連続的に発生するセンサデータの収集や管理、それらへの処理による負荷を分散するため、処理を複数のコンピュータへ割り当てる手法を平成28年度に提案した。提案手法はシミュレーションだけでなく、PIAXテストベッド上の実装システムによっても検証を行い、既存手法より負荷が分散できることを確認した。さらに、ライブ映像への特殊効果のリアルタイムな付与として、連続的に発生するストリームデータのリアルタイムな処理と配信についても、複数のコンピュータへ割り当てる手法の提案と評価を行った。ストリームデータへのリアルタイムな処理はライブラリによって複数の種類を用い、ルールに基づいて決定する手法も提案とデモ発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、本研究で平成28年度に計画していた想定環境や問題設定のモデル化、処理割り当て方式について、提案と対外発表を行った。また、ルールベースシステムにおいて重要なセンサデータの収集や管理、処理の分散手法を確立し、多くの学術論文誌や国際会議、国内研究会などで成果を発表した。成果の発表は口頭やポスターだけでなく、実装したデモシステムによるものも含む。また、Reteアルゴリズムに基づく分散型ルールベースシステムのPIAXテストベッド上での評価は平成29年度を予定し、準備を進めていたが、連続的に発生するセンサデータを複数のコンピュータへ割り当てる手法として、平成28年度にPIAXテストベッド上で評価を行った。ルール処理に必要なセンサデータはReteアルゴリズムに基づく分散型ルールベースシステムにおいても分散管理するため、平成29年度の達成度を大きく高められる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度には、平成28年度に確立した分散ルールベースシステムにおける処理割り当て方式を実システムによって評価する。P2Pオーバレイネットワークとモバイルエージェント機能が統合されたプラットフォームミドルウェアであるPIAXによって確立手法を現在実装しており、NICTにより整備と運営が行われているPIAXテストベッドによる評価の準備も進めている。センサデータを複数のコンピュータへ割り当てる手法を平成28年度にPIAXテストベッド上で評価しており、Reteアルゴリズムに基づくルール処理の割り当てと処理順序について実装と評価を行う。評価項目はCPU負荷や通信量、通信遅延を予定しており、日本国内の広範囲に実コンピュータ(ノード)が配置されているPIAXテストベッドでは実運用に近い実験結果を得られることが期待できる。さらに、ノードがすべて国内のPIAXテストベッドだけでなく、PlanetLabによる評価も検討と準備を進めている。PlanetLabは欧米を中心として世界中にノードが配置されている実験的ネットワークで、確立技術を地球規模の広域な環境で検証することが可能である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議発表を2件、聴講を1件予定していたが、開催地が国内やアジアだったために旅費が大幅に削減された。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に提案した方式を現実に近い環境で評価するため、Raspberry Piによる実機の開発やPIAXテストベッド上でのシステム構築を行う必要がある。そのため、大規模分散システムや実機、テストベッドに造詣が深い研究開発者との密な打ち合わせのために用いる。
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