本研究では、Reteアルゴリズムに基づく分散型ルールベースシステムにおけるルール処理および処理結果のより細かい割り当て方式を提案し、構築技術の確立を目的とする。平成28年度には本研究の想定環境や問題設定をモデル化し、処理割り当て方式について対外発表を行った。設計したモデルは以下の各機器の複数台によって構成し、各機器はインターネットやLANでつながっていることを想定する。 ・Reteアルゴリズムに基づいてルール処理やデータ管理を行う「処理コンピュータ」 ・ルール処理結果に基づいて動作やサービス提供を行う「アクチュエータ」 ・処理コンピュータへ生成データ(センサデータ)を送信する「センサ」 また、ルールベースシステムではルールの条件を満たすかどうかの判別のため、センサデータの扱いが重要となる。連続的に発生するセンサデータの収集や管理、それらへの処理による負荷を分散するため、平成28年度と平成29年度には処理を複数のコンピュータへ割り当てる手法を提案した。提案手法はシミュレーションにより評価し、既存手法より負荷が分散できることを確認した。ライブ映像への特殊効果のリアルタイムな付与として、連続的に発生するストリームデータのリアルタイムな処理と配信についても、ルールに基づいて柔軟に処理する手法の提案と評価を行った。 本事業は当初、平成29年度までを予定していた。しかし、平成29年度に投稿した英文論文誌の1件が不採録となり、査読結果へ対応するための再実験や再投稿などを行うため、平成30年度までの延長を申請した。平成30年度中に英文論文誌へ再投稿した原稿は採録が決まり、令和元年(2019年)5月に発行される。関連内容で一部の章を担当した英文著書も2019年中に発行予定のほか、平成30年度中にも複数の学術論文誌や国際会議、研究会などで論文を発表した。
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