研究課題
本年度は昨年度までに考案した技術を基礎として,数値積分に特殊関数である「正弦積分」に対し 4H-Algorithm を提案した.また,複素数を用いた高精度な数値積分則である「数値積分に対する超函数法」に対して,精度保証付きで計算を行うための誤差上限を求める方法を構築した.正弦積分の計算は,多項式の項と指数減衰の項が被積分関数に含まれる半無限区間の精度保証付き数値積分の計算に帰着させることができる.このアイデアにより,これまでに取り組んできた二重指数関数型積分公式の誤差上限に関する研究成果を直接利用することができるようになり,振動を繰り返す Sinc 関数を直接積分する際に比べて,高速かつ高精度な計算を実現することが可能となった.また「数値積分に対する超函数法」の誤差上限を求める方法では,従来理論的により知られていた複素平面上の無限領域(実軸に平行な帯状領域)で表現された誤差上限に対して,適切な変数変換を行うというアイデアにより,帯状領域を円環領域に変換することが可能となり,その結果,比較的シンプルな誤差上限の計算法を提案することができた.加えて本年度では,数値積分法の誤差上限の計算について,多様な分野の研究者との共同研究により新しい方向性を見出すことができた.これまでに取り組んできた数値積分法の誤差上限の計算法は,一般的な積分則の誤差上限として,高速性を狙い高階微分で表現される誤差項の「上限」を複素数を用いて計算していたが,時に過剰見積もりとなることがあった.この問題に対し,「高階微分の誤差項」を直接求める高精度高階微分計算法の研究が,対外的に発表を行うフェーズまで来ることができた.本研究課題に直結する内容のため,今後も積極的に推進していきたいと考えている.
2: おおむね順調に進展している
平成30年度の研究計画分は,申請書に記載した「ステージII」の領域に入り,「ステージI」で構築したアルゴリズムのいくつかの特殊関数への応用が目的となっているが,そのひとつとして正弦積分関数の計算法の構築が完了しているため,おおむね順調に進展していると言える.来年度以降も「ステージI」で構築したアルゴリズムの応用について,様々な特殊関数の 4H-Algorithm を構築できるよう研究を推進したい.
平成28年度・平成29年度・平成30年度で構築してきた技術をまとめ,複素変数を入力とする特殊関数の 4H-Algorithm 構築を行なう.この分野について多くの計算技術を持つ,共同研究者らと密に連携を取り,積極的に研究計画を推進していきたいと考えている.
平成29年度から本研究課題に関する実験データを研究員と連携して収集することで,これまで以上に多くのデータを取得することができるようになった.平成31年度以降もこれまでに実施した効率的な研究体制を構築することで,引き続き,高信頼なデータの収集を行なっていく予定である.
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