研究課題/領域番号 |
16K16071
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 好幸 東北大学, ヨッタインフォマティクス研究センター, 特任助教 (00548753)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 知覚心理学 / 多感覚統合 / 感覚運動統合 / ベイズモデル |
研究実績の概要 |
本研究は,多感覚情報の脳内統合機構を,心理実験及び数理モデルの融合的研究により解明することを目的としている.そのために,感覚情報が脳内でいつ統合されるのか,また何が推定されているのかに関する研究に重点を置く. 複数の情報の統合においては,それらの時間的な関係が重要となる.特に,脳内で情報を保持しておかなければならないようなタスクにおいては,時間とともに情報が劣化することが予測されるということが本研究計画の一つの着眼点となっている.時間を計測するためにはその起点となる時間タイミングが必要となるが,脳内情報統合プロセスにおいて,何が起点となって時間が計測されているのかということは十分明らかになってはいない. そこで本年度においては,特に理論的観点から,時間の起点が情報統合にもたらす影響についての研究を行った.通常,2つの音イベント間の時間差の知覚は,時間差が短いほど精度が良く,長くなるほど精度が悪くなっていくという性質も持つ(Weber則).本研究においては,特に3つ以上の音イベントが存在する場合に,時間を計測する起点のとり方によって,そのうちの2イベント間の時間差の知覚が通常とは逆に短いほど精度が悪くなることがありうることを理論的に示した.いまだ仮説の段階ではあるものの,通常予測される時間知覚の性質とは逆の性質を予測する結果となっている.本研究は音の知覚についての研究であったが,このモデルは多感覚統合にも容易に拡張可能なモデルとなっている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度においては,特に理論的観点から,時間計測の起点のとりかたによって,通常とは異なる知覚現象が予測されるという結果を得た.また,これまでに行った研究に関する対外発表も複数件行った.しかしながら,本年度においては,全体としては当初の予定通りに研究が進んだとは言い難いためこの評価とした.これは主として,代表者が本年度の途中で所属変更を行ったために,本計画に関する研究を行う環境が大きく変化したためである.そのため,補助期間の延長を申請し研究を引き続き行うこととした.
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画においては,多感覚統合のメカニズムの解明を目指し,特に感覚統合の時間的特性,推定としての情報統合において何が推定されているのか,感覚統合において何がどのように学習されるのか,という3つの観点から研究を行うものである. 今後の研究では,今まで行ってきた実験的研究がどのようにモデル的に説明しうるかに関する研究,また,モデル研究から得られてきた予測の検証研究などを行うことにより,理論・実験からの相互互恵的に研究を発展させることを目指す. また,今まで得られてきた成果の発表に関しても,論文執筆や学会発表などを精力的に行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
代表者が本年度の途中で所属変更を行い,,研究・実験環境の変化による新たな環境構築が必要であったこと,所属研究機関変更に伴う関連業務による多忙などの理由から,当初の計画通りに研究が進まなかった.そのため,補助期間の延長を申請し研究を引き続き行うこととした.
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