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2016 年度 実施状況報告書

他者による自己の心的状態推測の認識と意思決定への利用

研究課題

研究課題/領域番号 16K16076
研究機関順天堂大学

研究代表者

小川 昭利  順天堂大学, 医学部, 助教 (30374565)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワード意思決定 / 機能的磁気共鳴画像法 / 心の理論 / 側頭頭頂接合部
研究実績の概要

本研究(他者による自己の心的状態推測の認識と意思決定への利用)は、他者の「心の理論」を認識・学習して意思決定に利用する認知過程の行動・神経基盤を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)実験により明らかにすることを目指している。そのために、手の読み合いが想定される二人非協力非ゼロ和ゲームにおいて、ヒトと対戦している条件、コンピュータと対戦している条件を用意し、課題中の行動と脳活動を計測することとした。
初年度となる今年度は、まず、fMRI実験の予備実験となる行動実験を実施して、「他者から心を推測されることの認識」に基づく意思決定の計算モデルの妥当性を、強化学習モデルと比較して検討した。予備実験(実験参加者7ペア14名)の結果は、本研究のモデルが強化学習モデルよりもより実験参加者の行動を説明できた。この結果をうけて、本研究はfMRI実験に以降し、現在fMRI実験を行っているところである。これまでに、実験参加者15ペア30名のデータを収集し、予備実験の行動実験と同様に、本研究のモデルが強化学習モデルよりもより実験参加者の行動を説明できることを確認した。同時に、「心の理論」に関係する脳部位(例えば右側頭頭頂接合部)を同定する、機能的ローカライザーの評価を行った。計測時間5分という短時間にも関わらず安定して標的となる脳部位を個人ごとに同定することができた。関連するfMRI研究と合わせて、日本語版ToM Localizerとして雑誌論文を発表予定(小川他、in press、心理学研究)である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究(他者による自己の心的状態推測の認識と意思決定への利用)の初年度となる今年度は、予備実験となる行動実験、計算モデルの設定、fMRI実験の開始を予定していた。
予備実験の行動実験では、二人非協力非ゼロ和ゲームにおいて、ヒトと対戦している条件、コンピュータと対戦している条件を用意し、「他者から心を推測されることの認識」に基づく意思決定の計算モデルの妥当性を検討した(N=14)。結果、強化学習モデルとくらべて本研究のモデルの方が実験参加者の行動へのフィッティングが良かった。この結果から、予備実験からfMRI実験の本実験へ移行した。
fMRI実験は、予定通り、東京大学進化認知科学研究センターのMRI 装置(Prisma 3T, Siemens)を使用して行った。fMRI実験の開始にあたってまず、MRIによるスキャン中に、2名に同時に刺激を呈示し、反応を記録する実験セットを構築した。この実験セットには汎用性を持たせて、本研究以外のfMRI実験でも使用できるようにした。しかし、眼球運動計測が難しい状況があり、このfMRI実験では眼球運動計測なしでスキャンを行った。fMRI実験で視線計測ができない場合に備えて、視線計測を行う行動実験を準備している。実験では、実験参加者はペアとなり、1名がMR スキャナー内、もう1名はスキャナー外で実験を行った。現在のところ、15ペア30名の参加者のデータを収集している。予備実験の行動実験と同様に、本研究のモデルが強化学習モデルよりもより実験参加者の行動を説明できることを確認した。
本研究の一部として行った研究について、雑誌論文の発表(Scientific Reports、心理学研究、計2報)および学会発表(第9回人間行動進化学会、計1回)を行った。

今後の研究の推進方策

本研究(他者による自己の心的状態推測の認識と意思決定への利用)の来年度は、fMRI実験を完了し、計算モデルを用いた行動・脳活動データの解析等を行って、研究成果をまとめて国際ジャーナルに論文を投稿する予定である。また、脳機能計測における最先端のfMRI データ解析手法による新しい方向への研究展開の検討を計画している。
現在計測済みのデータの解析を進めて、追加のfMRI実験で視線計測を行う予定である。fMRI実験で視線計測をできない場合には、代替として行動実験で視線計測と視線データの解析を行う予定である。
また、機能的結合(functional connectivity)に基づく、parcellation(区画分け)やグラフ理論モデルによる解析等の先端的解析手法の適用について検討し、新たな計算モデルや解析方法の方向性を模索する。

次年度使用額が生じた理由

主に国内出張と英文校正の費用について使用予定額に満たなかったため。

次年度使用額の使用計画

次年度の国内出張と英文校正の費用に充当する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Perceived moral traits of others differentiate the neural activation that underlies inequity-aversion2017

    • 著者名/発表者名
      Hironori Nakatani, Akitoshi Ogawa, Chisato Suzuki, Takeshi Asamizuya, Kenichi Ueno, Kang Cheng, Kazuo Okanoya
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 7 ページ: -

    • DOI

      10.1038/srep43317

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 日本語版ToM Localizer for fMRIの開発2017

    • 著者名/発表者名
      小川昭利, 横山諒一, 亀田達也
    • 雑誌名

      心理学研究

      巻: 88 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [学会発表] 他者のためのリスク決定を支える認知過程の研究ーマウスラボとfMRIによる検討ー2016

    • 著者名/発表者名
      上島淳史, 小川昭利, 亀田達也
    • 学会等名
      第9回人間行動進化学会
    • 発表場所
      金沢市文化ホール
    • 年月日
      2016-12-10 – 2016-12-11

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公開日: 2018-01-16  

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