本研究は,昨年度の暗算課題に関する実験の成果を応用し,沈黙中の被験者の脳波と脳血流の同時測定結果から,前頭前野脳活動の左右差に基づく指標(FAA: Frontal Alpha AssymetryとLIR: Laterality Index at Rest)を用いて,気分障害リスクや不安度の推定可能性について実験を行なった。推定誤差を検証するために,気分障害リスクに関する実測データとして抑うつ尺度(BDI-IIスコア),および,不安度の実測データとして状態‐特性不安尺度(STAIスコア)を用いた。計14点のサンプルデータについて相関分析を行なったところ,BDI-IIスコアとLIRに強い相関(r = -0.45)があることがわかった。次に,2名の被験者について被験者内時系列データからそれぞれに相関があることが確認できた。この結果について,査読付き国際会議(2018年7月)で発表を行うことが決定している。現在,その結果について自己組織化マップを用いて特徴量の解析を行なっているところである。
前年度研究成果の発展として,さらに,被験者202名について時間分解能NIRSを用いて前頭前野の脳機能計測を行い,計15個の脳機能データの項目を入力とするDeep Neural Networkを構築した。クラス分類(MMSEスコア24未満と24以上の2クラス)の結果,91.5%の精度を確認し,さらに,oxy-Hb,deoxy-Hb,SO2だけでなく,プローブから大脳皮質の光経路長がその推定結果に影響を与えていることを発見し,考察している。本分析結果について論文投稿を行い,学術論文(2018年7月発刊予定)に採択されている.
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