研究課題/領域番号 |
16K16079
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
福森 聡 関西学院大学, 理工学部, 契約助手 (00756710)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Virtual Reality / 身体所有感 |
研究実績の概要 |
本研究では、身体認識と不快な情動の関係を明らかにすることを目指している.この目的を達成するためには、身体の空間的な認識を明らかにすることが必要不可欠である.そこで本研究ではバーチャルリアリティ技術を用いて身体認識を明らかにするための研究を実施している. 身体の空間的な認識を明らかにするため、本研究では身体保持感と呼ばれるこの身体はまさに自分のものだという感覚に着目して視覚提示による実験を行った.実験では、頭部に装着するタイプのディスプレイ(Head mounted display: HMD)とComputer Graphics(CG)を組み合わせて視覚情報を実験参加者に提示した.この実験を通して、ヒトが上肢の空間的な位置を認識する際には、その認識には空間的な方向の偏りが生じる可能性が新たに示唆された.そこで、本研究では身体認識に偏りが生じる要因について調査するとともに、この偏りについてさらなる追加の実験を行っている.追加の実験では前述の実験で使用したHMDとCGに加えて、上肢の動きを検出するためのセンサを新たに導入することで実験中の手の動きを計測して、その動きをCGに反映した.追加の実験はおおむね終了しつつあり、分析も進行中である. さらに、本研究で作成した実験環境を鏡療法に応用する研究も実施した. 応用研究を行うにあたり本研究では治療効果が報告されている種々の鏡療法の違いを身体認識の視点から考察した.その結果、視覚情報をコントロールして身体保持感を変化させることで、患者の症状に合わせた鏡療法による治療機会を与えられると考えた.本研究により、視野角を変更することによって身体保持感を低下させたり増加させたりすることができることを明らかにした.この結果は、バーチャルリアリティ技術を鏡療法による応用する際に重要な知見となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、バーチャルリアリティ技術を用いることによって、上肢の位置認識には空間的な認識に方向的な偏りがあることを新たに確認した.この結果は、当初の計画を変更してHMDを使った事が大きく貢献している.計画を途中で変更してHMDを使用したことや、偏りに関する新たな知見が研究の最終的な目標の達成をやや遅れさせているものの、非常に興味深い結果であるため身体の認識に関する追加の実験を行っている.なぜならば、この偏りは本研究の目的達成に与える影響が非常に大きい可能性が高いためである. 追加の実験のために新たな実験環境を構築することで、結果として最終的な目標である身体認識と不快な情動の関係を明らかにするための実験環境もおおむね完成している.現在は、この実験環境をもとにした最終的な目標を達成するための実験プロトコルを作成中である.
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今後の研究の推進方策 |
心理学の知識背景をもつ研究者から助言を受けながら、最終的な目標を達成するための実験プロトコルを作成中である.その理由は二つあり、一つは実験参加者の負担を考慮した実験プロトコルを作成するため、もう一つは不快な情動をどのように収集するかという点で助言を受けるためである.専門家の助言を受けることで本研究の目標をより適切かつ迅速に遂行できると考えている. これまでの実験で使用してきた実験環境は、身体認識と不快な情動の関係を明らかにするための実験でほとんど同じように使用することを念頭に構築してきた.そのため、これまで実験環境を流用することによって今後の実験を開始できる.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行の途中段階で、視覚提示と計測を統合した新たな製品が登場したことで研究計画を変更する必要が生じた.この製品を研究に用いれば、実験条件の統制がより厳格になり、かつより適切な刺激を実験参加者へ提示できることがわかった.より精緻に本研究の目的が達成されると考えたため、研究計画を変更して新たに実験環境を再構築することにした.また当該製品は発売当初はその製品の入手が容易でなかったために計画変更に影響を与えた. 主な使用計画は、実験の参加者への謝金と論文の掲載料である.なぜならば、実験装置は購入済みであり、また実験環境も構築済みであるためである.ただし、必要に応じて実験機材のメンテナンスのための部品を購入することもある.
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