研究課題
フーリエ変換は工学における重要な基礎技術の一つである。特に信号処理では、信号の周波数成分を活用したアルゴリズム設計が一般的であり、フーリエ変換はその方法論の根幹をなす。フーリエ変換の一つの課題がO(NlogN)の計算量(Nは信号長)であるが、これを信号のスペクトルスパース性に着目して削減した手法がスパースフーリエ変換であり、その計算量はO(KlogN)である(Kはスペクトルの非ゼロ成分の数)。スパース性の特徴は現実の多くの信号が満たすと考えられている。例えば画像圧縮では、JPEG/MPEG/H.264など、視覚的に影響の少ない画像中の高周波周波数成分を積極的に削減することでデータ量の圧縮を実現している。本テーマの主な目的はスパースフーリエ変換の性能改善とそれに関する基礎技術・応用技術の確立である。当該年度は、スパースフーリエ変換の内部で用いられる基礎技術の性能改善に注力した。昨年度の進捗報告において、応用面での性能改善には依然として基礎性能の大幅な改善が必要であると結論づけていた。これを踏まえ、基礎技術の一部であるフィルタ処理に着目し、特に線形フィルタと非線形フィルタの両方を対象にその高速化や定数時間フィルタの性能改善に取り組んだ。線形フィルタとしてはガウシアンフィルタを中心に、非線形フィルタとしてはバイラテラルフィルタやガイデッドフィルタを中心に高度化した。具体的な成果として、ジャーナル論文1件、国際会議論文4件、国内会議論文4件(うち受賞1件)を挙げた。国際会議論文はいずれも信号処理分野で世界的に最も権威あるフラグシップ会議に採択されており、また国内シンポジウムでベストポスタ賞も頂き、国内外から高い評価を得ていると考えている。その他、成果発表が縁で米Dayton大学との新たな国際共同研究もはじまり、上記のうち国際会議1件はこの成果である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 4件)
IEICE Transactions on Information and Systems
巻: E101-D(2) ページ: 523-530
10.1587/transinf.2017EDP7326