研究課題/領域番号 |
16K16093
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
佐保 賢志 富山県立大学, 工学部, 講師 (00732900)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 移動体追跡 / ドップラーレーダ / 加速度センサ / 超音波センサ / センサ融合 / 追尾フィルタ / 最適設計 |
研究実績の概要 |
平成29年度は理論と実験の双方において多くの重要な進展があった。 理論的研究の主要な実績は以降に示す4点である:1.位置と速度を同時に観測する移動体追尾について、定常状態における特性を理論的に解明し、この結果に基づく効率的な高精度追尾システム設計法を開発した。2.位置と速度を同時に観測する追尾システムにおいて、これらの観測パラメータに相関性の誤差がある場合について、提案している設計方法論を拡張した。3.これまでに検討してきた位置・速度・加速度に加え、加速度の一階時間微分であるジャークを同時推定する追尾フィルタについて、その基礎的な特性を解明した。4.これまでに開発してきたセンサ融合追尾理論を多目標追尾へと発展させることを検討し、基礎的な知見を得ることができた。 続いて,実験的研究の主要な成果は以降に示す4点である:1.開発してきた理論を超広帯域ドップラーレーダ追尾に適用し、その有用性を示した。2.ドップラー分離干渉計という、申請者らが独自に開発してき高精度レーダ計測技術に対して、開発した理論に基づく信号処理により、10いない程度の複数目標の同時追尾を達成した。3.超音波3次元測位装置、ステレオカメラ、マイクロドップラーレーダを組み合わせた歩行者追跡システムを構成し、前年度に提案したH∞フィルタを用いる移動体追尾フィルタを適用し、その有用性を示した。4.提案してきた追尾技術の一部を高齢者の歩行計測に応用し、その結果を高齢者のバランス能力評価に適用可能であることを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
既に実施計画にて構想していた多くの理論解析と実験システム構成を行うことができている。そればかりか、実験も効率的に実施できており、理論的成果のみならず実験的な成果も学会発表することができており、いくつかの学術誌論文も発表済みである。加えて、当初は想定していなかった歩行追跡技術の高齢者モニタリングへの応用など、研究の新たな展開もできつつある。以上より、この区分での進捗状況評価が妥当と考える。
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今後の研究の推進方策 |
まず第一に、これまでに得られた知見を全て学会及び論文誌に発表できているわけではないので、来年度は必要なものを対外的に発表していくことにまず注力したい。 研究の方法についてもまだ検討すべき点が残っているため、上記発表と並行して以下の方針で研究を推進していく。まず理論解析については、2つの観測パラメータ(位置と速度、位置と加速度)の同時観測を想定した場合についてはかなり進展してきているものの、定常状態の解析のみに留まっていることが問題点である。そこで、過渡状態の解析についても今後注力する。また、当初計画にもあった3つ以上の観測パラメータ同時観測についても、検討はできているものの相対的にはまだ進展が少ない。この点についてもさらに推進していく。また実験については、これまでは室内用の小規模なシステムを主に検討してきたが、応用範囲を広げるため屋外での小型ビークルに提案してきた追尾システムを実装することも検討する。加えて、昨年度開拓した新たな着眼点である、歩行者追跡結果の高齢者モニタリングへの応用についても引き続き検討を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、主に現在投稿中の論文の掲載料及び論文修正時の英文校正料とする予定であった金額である。しかし、当該論文の査読状況の都合により掲載決定が次年度以降となったことから、この次年度使用額が生じるに至った。従って、次年度中に同様の使途にて執行する予定である。なお研究進捗状況が当初予定より芳しいことから、翌年度分といて請求した助成金についても、主に論文投稿にかかる費用あるいは研究発表に用いる旅費が主な使途となる見込みである。
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