研究課題/領域番号 |
16K16094
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
福森 隆寛 立命館大学, 情報理工学部, 助教 (60755817)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 音環境理解 / 危機検知 |
研究実績の概要 |
本研究では、家庭内の危機的状況を検知することを目指して、学術研究助成基金助成金交付期間内に音環境をリアルタイムで自動推定できるシステムを開発する。具体的には、本研究を以下に示す4つのサブテーマに分けて研究を実施する計画である(<研究1-3>で音環境推定から危機的状況の検知までの一連のアルゴリズムを開発し、<研究4>でこれらの研究成果を統合した危機検知システムを開発する)。 <研究1> 家庭内に存在する不要な雑音成分の除去 <研究2> 音環境推定に適切な音声・音響特徴量の特定 <研究3> 音情報の構造化と危機的状況の検知 <研究4> 音環境推定に基づく危機検知システムの開発 平成29年度は、上記項目の「<研究3>音情報の構造化と危機的状況の検知」と「<研究4> 音環境推定に適切な音声・音響特徴量の特定」の一部に取り組んだ。<研究3>では、生活環境音の中でも特に室内で発生した音の内容を認識するためのアルゴリズムを開発した。具体的には、観測された環境音から人間の聴覚特性との相性が良いとされている音響特徴量(メルフィルタバンク出力)を抽出し、それらを用いて深層学習に基づき、環境音を自動識別するためのディープニューラルネットワークを構築した。そして、評価実験を通してこのアルゴリズムの有効性を確認した。加えて、<研究4>にも一部関係するが、危機的状況を表す叫び声をリアルタイムで検知できる音響システムを開発した。このシステムには、マイクロホンに入力された音声を<研究2>で明らかにした音声・音響特徴量に基づいて叫び声と平静音声のいずれかに分類し、さらに分類時に用いる統計的情報から叫び声らしさを評定する機能を有する。このシステムを開発したことによって、アウトリーチ活動などにおいて、危機検知システムの一部をデモンストレーションとして公開できる準備が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
音環境を理解するためには「その空間の中でどのような音が発生しているのか?」、そして「その音が危険性を示すのか?」を判断することが必要不可欠である。平成29年度では、生活環境音に関する音情報の構造化と危機的状況を検知するアルゴリズムを提案した。そして、評価実験を通して、実際の利用環境を想定した条件において、正確な生活環境音の構造化を実証することができた。更に最終年度に取り組む予定であった危機検知システムの一部である叫び声検知システムも開発できたことから、本研究課題はおおむね順調に研究が進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、平成29年度までに確立した「<研究1>家庭内に存在する不要な雑音成分の除去」、「<研究2>音環境推定に適切な音声・音響特徴量の特定」、「<研究3>音情報の構造化と危機的状況の検知」に基づいて、最終年度では当研究課題の集大成として「<研究4> 音環境推定に基づく危機検知システムの開発」に取り組む予定である。具体的には、生活環境音の中でも叫び声だけでなく、あらゆる異常音(ガラスが破砕する音、物が倒れる音、爆発音など)をリアルタイムで検知するシステムを開発する計画である。実際の利用現場においては、騒がしい環境や遠方にある目的音を獲得しなければならない環境で危機的状況を検知することが想定される。そこで本システムの有効性を示すために、大規模な音声・音響試料を使用して様々な実験環境を再現した検証実験や、アウトリーチ活動を通した実証実験に取り組み、本システムの精度向上を目指す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の研究実施状況報告書にて説明した通り、平成29年度は、学術研究助成基金助成金を使って、雑音除去・音環境推定アルゴリズムを搭載したデモシステムを開発する計画であったが、音声分野の第一線で活躍されている大学教員ならびに企業研究者から頂戴したアドバイスを参考にして、デモシステムの開発・運用に必要な資源を大幅に削減することに成功し、これにより当初の予定よりも安価でデモシステムを開発することができた。 平成30年度では、「<研究4>音環境推定に基づく危機検知システムの開発」に重点を置き、システム自体の性能改善や危機検知システムの外部公開を目指して、平成29年度において生じた次年度使用額を対外的な活動(学会発表、アウトリーチ活動、学外での実証実験など)に充当する計画である。
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