本研究では、家庭内の危機的状況を検知することを目指して、本助成金交付期間内に音環境をリアルタイムで自動推定できるシステムを開発した。具体的には、本研究を以下に示す4つのサブテーマに分けて研究を実施した(<研究1-3>で音環境推定から危機的状況の検知までの一連のアルゴリズムを開発し、<研究4>でこれらの研究成果を統合した危機検知システムを開発した)。 <研究1> 家庭内に存在する不要な雑音成分の除去 <研究2> 音環境推定に適切な音声・音響特徴量の特定 <研究3> 音情報の構造化と危機的状況の検知 <研究4> 音環境推定に基づく危機検知システムの開発 最終年度は「<研究4> 音環境推定に基づく危機検知システムの開発」を重点的に取り組んだ。具体的には、コンピュータ上で危機的状況をリアルタイムで検知できる音響システムを開発した。このシステムは、マイクロホンに入力された音を<研究2>で特定した音声・音響特徴量に基づいて危機的状況の度合いを評定し、その結果をコンピュータのディスプレイに表示する機能を有している。また、この<研究4>で開発したシステムの運用試験を進める中で、危機的状況の推定精度がマイクロホンと音源の位置関係に依存することが判明した。そこで、本最終年度において、音が発生する環境(特に発生した音がどれほど認識しにくいか)を自動的に理解するために、危機的状況の推定精度を入力音から推定するアルゴリズムを開発した。具体的には、様々な環境で発生した大量の音データを使って、入力音から認識率を予測するディープニューラルネットワークを構築した。これにより、認識しにくい環境で発生した音に対して、事前に認識精度を改善するための信号処理を適用できるようになったため、より頑健に動作する危機検知システムを開発することができた。
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