研究課題/領域番号 |
16K16104
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研究機関 | 諏訪東京理科大学 |
研究代表者 |
山口 一弘 諏訪東京理科大学, 工学部, 助教 (90649063)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 3次元画像 / 計算機合成ホログラム / 無線伝送システム |
研究実績の概要 |
1.研究の目的 3D表示技術の1つである計算機合成ホログラム(CGH)では,ホログラフィと同様に自然な立体視を実現可能であり,かつ,仮想物体の3D表示化や高い臨場感を持つという特徴があるため,将来の3D表示技術として注目されている.本研究課題では, CGHの計算・伝送・表示を実現するCGH無線伝送システムの開発を目指し,伝送エラーがCGHおよびその再生像に与える影響を解明し,伝送エラーによる影響のないCGH伝送を実現することを目的としている. 2.本年度の実施項目 本年度では,伝送時に生じる伝送エラーがCGH自身へと与える影響の理論的な解析,伝送エラーによって生じるノイズの3次元光波分布の理論的な解析を行った.これらの解析には,波動光学に基づく膨大な演算量が要求されるため,CGH計算,光波解析を行うCGH計算装置をGraphic Processing Unit(GPU)を用いて構築し,GPUを用いた並列計算アルゴリズムを開発した.そしてCGH無線伝送における伝送エラーのモデル化を行い,計算機シミュレーションによって理想状態である無圧縮・無劣化の伝送時と比較を行い評価した.また,次年度実施予定のCGH無線伝送を実現するため,CGH無線伝送アルゴリズムを開発し,CGH伝送装置へと組み込んだ.これらにより,次年度開発予定のCGH表示装置へとCGHを伝送する準備が整い,次年度以降の実験におけるCGH計算・伝送の環境が整った.次年度以降では,計算機シミュレーションによる結像シミュレーションや,CGHから実際に像を再生する光学再生を行い,伝送エラーによる影響を確認する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度実施予定あった伝送エラーのモデル化,伝送エラーがCGH自身に与える影響の理論的な解析,および伝送エラーによるノイズの3次元光波分布の理論的な解析は完了し,ほぼ予定通りに順調に進んでいるといえる.また,同じく本年度実施予定であった,CGH計算装置およびCGH伝送装置の開発を完了し,次年度に開発予定のCGH表示装置へとCGHを伝送する準備が整い,ほぼ予定通りに順調に進んでいるといえる. 次年度以降に開発予定のCGH表示装置では,高精細な光空間変調素子(SLM)が必要となるが,当初調達予定であったSLMのモデルチェンジに伴い,CGH計算および伝送時に想定される必要なスペックが変更となった.これにより,本年度の途中に仕様変更を実施し,特に伝送処理部分では,想定していた以上の高速通信が要求される可能性が生じたことから,複数の送受信アンテナでデータを伝送するMultiple-Input Multiple-Output(MIMO)技術など,高速通信のための伝送アルゴリズムの改良が必要になった.このため,3か月ほど繰り越すことになり,本年度末に学会発表予定であった内容を来年度発表へと変更することになった.ただし,この再検討により,CGHの無線伝送処理の自由度が向上し,今後の研究に有用な結果となったと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
本年度に開発したCGH計算装置・伝送装置により,次年度開発予定のCGH表示装置へとCGHデータを伝送する準備が整った.次年度では,CGH表示装置を開発し,CGH計算から伝送を経て表示するまでのシステムを構築する予定である.そして次年度以降では,結像シミュレーションや光学再生を行い,再生像の画質劣化と伝送エラーの関係性を実験により評価する予定である. また,前述のごとく,無線伝送処理の伝送アルゴリズムの改良により,無線伝送処理の自由度が大幅に向上したため,当初計画していた以上に広い範囲の研究が進められると思われる.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度以降調達予定のCGH表示機器の仕様変更に伴い,本年度に開発していたCGH計算装置およびCGH伝送装置に関して,本年度途中に改良を加えた.またこれに伴い,無線伝送処理に関して,当初計画していた以上の通信速度が要求される可能性が生じたため,伝送アルゴリズムの改良を行った.このため,当初予定していた学会発表を次年度へと繰り下げた.ただし,この改良により無線伝送処理の自由度が大幅に向上したため,次年度以降の研究に有用な結果となったと考える.
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次年度使用額の使用計画 |
本年度末に予定していた学会発表のスケジュールを繰り下げ,次年度において学会発表時の旅費として利用する.
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