研究課題/領域番号 |
16K16110
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
笹野 遼平 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (70603918)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 格フレーム / 格と語順 / 意味役割 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、大規模テキストからの語横断的フレーム知識の自動獲得、および、自動獲得したフレーム知識に基づく実用的な意味解析システムを実現することである。本年度は、第一段階として,フレーム項の意味役割の分析,および,ベクトル表現に基づくフレーム項の意味カテゴリの記述に取り組んだ。 まず、語横断的な格の意味役割の分析を1つの目的として、日本語二重目的語文の基本語順の分析を行った。分析結果が示唆する結論として、1)日本語二重目的語文の基本語順は動詞により異なる、2)PassタイプとShowタイプといった動詞のタイプは基本語順とほとんど関係しない、3)対象の動詞に対し省略されにくい格は動詞の近くに出現しやすい、4)基本語順はニ格の意味役割により変化する、5)対象の動詞と高頻度に共起するヲ格名詞・ニ格名詞は動詞の近くに出現しやすい、という5つの結論が得られた。この結果から、項の語順選好が、項の役割推定の手掛りとなる可能性があることが分かった。 また、格フレームの用例カバレッジの問題に対処するため、フレームの項が取りうる名詞集合の、ベクトル空間上での意味表現の獲得を目指した実験を行った。具体的には、フレームの特定の項の用例として収集された名詞のベクトルの集合を、ベクトル空間上の多次元ガウス分布で表現することにより、学習ベースのモデルには及ばなかったものの、単純にベクトルの平均値からの距離で選択選好を表現するより、正確に選択選好を表現できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
二重目的語文の基本語順の分析に関しては、項の語順選好と、意味役割の間に何らかの関係があることを示唆する結果が得られるなど一定の成果が得られたが、フレーム項の意味カテゴリの記述に関しては、試行したモデルでは十分な精度が実現できていないため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,現在のところ十分な精度が得られていない,ベクトル表現に基づくフレーム項の意味カテゴリの記述の精緻化に引き続き取り組む予定である。また,並行してフレーム間の意味関係知識の獲得にも取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は小規模な実験が中心であったため,予定していた新たな計算機の導入が必要とならなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に向けて,特にニューラルネットに基づくモデルを構築するために,GPU性能を重視した計算機を導入する予定である。
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