研究課題/領域番号 |
16K16113
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
森田 純哉 静岡大学, 情報学部, 准教授 (40397443)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | コミュニケーション / 文化進化 / 認知シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究計画は、計算機モデリングに基づく構成的手法と実験室実験に基づく実証的手法を組み合わせ、コミュニケーションの文化進化における騙しの役割を検討する。この検討の際に、協調場面におけるコミュニケーションの文化進化に関わる研究をベースとしてアプローチする。H29年度は、以下の3つの項目に取り組んだ。 コミュニケーション構成における個人差を検討するシミュレーション: 昨年度までに構築してきたコミュニケーションゲームを課題としたモデルに対し、記憶検索のパラメータを操作するシミュレーションを実施した。シミュレーションの結果、コミュニケーションの成立に至るまでのパスとして、従来は得られていないパターンが見出された。これにより、自閉傾向を含む多様な個人と合致する振る舞いを検討する糸口が得られた。 コミュニケーション実験の大規模化: H28年度から継続し、多人数授業において、受講生が同時にコミュニケーションゲームに参加する実験を実施した。50名以上が参加する実験を3回実施し、実験システムの完成度を高めた。 コミュニケーション実験の複雑化: 騙しの発生を検討するために、実験課題を複雑化する取り組みを進めた。従来までに扱ってきた課題に対し、状態空間を増加する改定をおこなった(4部屋から9部屋に増加)。改定後の課題を用いて、実験参加者にコミュニケーション実験へ取り組ませたところ、最適なコミュニケーションシステムの形成に要する時間が増大することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H29年度の検討のなかで、協調ゲームの状態数を増やすなど、課題を複雑化した。その環境で予備的な実験を実施した結果、実験時間が増加するなど参加者実験のコストが増加することが示された。本研究の焦点である騙しの発生を捉えるためには、実験課題のコストを調整する適切な工夫が必要になる。課題コストの調整方法としては、事前に与える教示量を増やすことや課題の分割などを検討する。
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今後の研究の推進方策 |
課題状況の曖昧性を増加させた状況におけるコミュニケーションシステム発生についてのシミュレーション研究を進める。操作するパラメータとして、ゲームの状態数、ジレンマの有無などを想定する。シミュレーションの結果をまとめることで、仮説を絞り込み、実現可能な行動実験の状況を設計する。
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次年度使用額が生じた理由 |
H29年度の検討において、騙しの発生を検討する実験の仕様が定まらず、実験システムを構築する機材の購入に遅れが生じた。H30年度の検討を踏まえつつ、実験仕様を定め、機材を購入する。
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