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2016 年度 実施状況報告書

一般化位相縮約理論が拓く生体リズム現象の予測と制御に向けた新展開

研究課題

研究課題/領域番号 16K16125
研究機関青森大学

研究代表者

紅林 亘  青森大学, ソフトウェア情報学部, 講師 (70761211)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード非線形力学系 / 位相縮約 / データ分析 / 神経細胞 / リズム現象 / 生体リズム / 最適制御 / ベイズ推定
研究実績の概要

位相縮約理論は,多様な生体リズム現象を解析・予測するための基礎理論として重要な役割を演じてきたが,最近国内外でこの理論の制御等への応用が活発化し,再び注目を集めている.しかし,この理論は系への入力が十分弱い場合にしか適用できず,この制約が応用研究の障害となっていた.そこで我々は,この制約の大幅な緩和に成功した一般化位相縮約理論(紅林 他, Phys. Rev. Lett., 2013)を提案した.本課題では,この新理論に基づいて従来の予測・制御手法を拡張し,応用研究を加速させるための理論的基盤を構築する.ネットワーク上の強い相互作用に由来する非自明な集団現象の予測等,従来は不可能だった予測や制御を可能にする新手法を確立するとともに,理論面でも一層の深化を図り,非自明な集団現象の機序を数理的に解明することを目指している.
本課題では主に,3つの研究テーマ「A. 振動子ネットワークにおける集団現象の予測手法の展開」,「B. リズムに着目した最適制御法の頑健化」,「C. データから最適な位相モデルを選択する理論的枠組みの確立」に取り組んでいる.振動子の集団現象の予測は,生体リズム現象の研究において中心的な課題であり,脳神経系,歩行運動の制御,概日リズム等,多様な生体機構において重要な役割を演じるが,従来の理論ではこうした現象の定量的な予測は困難である.また,こうした問題はリズムの最適制御においても同様であり,ある程度の強度を持つ制御入力により,複雑なリズム制御を可能にする手法の確立が必要である.さらに,提案モデルを実データ,実問題に対して適用していくためには,データから適切なモデル選択を行う手法を確立することも欠かせない.本課題の遂行を通して以上の問題を解決し,一般化位相縮約理論の幅広い応用研究を可能にするための理論的基盤を構築する.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究実績の概要で述べたように,本課題では3つの研究テーマ「A. 振動子ネットワークにおける集団現象の予測手法の展開」,「B. リズムに着目した最適制御法の頑健化」,「C. データから最適な位相モデルを選択する理論的枠組みの確立」に取り組んでいる.
一年目は,計画当初の予定では,研究テーマ「A. 振動子ネットワークにおける集団現象の予測手法の展開」に関係し,一般化位相縮約理論において系の応答特性を特徴づける感受関数から,振動子ネットワークの一般化位相モデルを計算する手法を開発することを予定していた.一年目では,実際にこの計算手法の確立を果たし,研究会でその成果を発表したが,原著論文として成果をまとめる作業はまだ完了していない.
一方で,計画では二,三年目に予定していた研究テーマ「C. データから最適な位相モデルを選択する理論的枠組みの確立」に,前倒しで取り組んだ.この研究テーマでは,一般化位相モデルをパラメータについて線形な統計モデルで近似記述し,パラメータ推定によってモデルを決定する手法を開
発することを予定していたが,一年目の研究でこの推定手法の確立を果たし,研究会でその成果を発表している.ただし,このテーマについても,原著論文として成果をまとめる作業はまだ完了していない.以上のように,当初の計画とは若干変更があるものの,順序を変えつつ順調に計画を遂行しているため,「おおむね順調に進展している」を選択した.

今後の研究の推進方策

「現在までの進捗状況」で述べたように,一年目に予定されていた研究テーマ「A. 振動子ネットワークにおける集団現象の予測手法の展開」の確立を果たすとともに,二,三年目に予定していた研究テーマ「C. データから最適な位相モデルを選択する理論的枠組みの確立」にも前倒しで取り組み,成果をまとめているが,いずれのテーマについても成果を原著論文としてまとめる作業が目下進行中である.したがって,今後,これらの論文執筆を急ぐとともに,研究テーマ「B. リズムに着目した最適制御法の頑健化」に取り組んでいく.

次年度使用額が生じた理由

一年目では当初,研究テーマ「A. 振動子ネットワークにおける集団現象の予測手法の展開」に集中的に取り組む予定であったが,並行して研究テーマ「C. データから最適な位相モデルを選択する理論的枠組みの確立」に取り組んだため,テーマAは最終段階まで到達していない.このため,当初購入を予定していた数式処理ソフトの購入を行っておらず,一年目の使用額は若干少ない額となっている.

次年度使用額の使用計画

「理由」で述べたように,当初購入を予定していた数式処理ソフトの購入を行っていないが,計画の遂行には必要なソフトであるため,二年目での購入を予定している.また,今後論文執筆と投稿を進めているため,当初計画の通り,英文校正などの費用を計上していくことが考えられる.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Phase-amplitude reduction of transient dynamics far from attractors for limit-cycling systems2017

    • 著者名/発表者名
      S. Shirasaka, W. Kurebayashi, H. Nakao
    • 雑誌名

      Chaos

      巻: 27 ページ: 023119(1-7)

    • DOI

      http://dx.doi.org/10.1063/1.4977195

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Phase reduction theory for hybrid nonlinear oscillators2017

    • 著者名/発表者名
      S. Shirasaka, W. Kurebayashi, H. Nakao
    • 雑誌名

      Physical Review E

      巻: 95 ページ: 012212(1-6)

    • DOI

      https://doi.org/10.1103/PhysRevE.95.012212

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 一般化位相縮約法による強く結合した振動子系の同期解析2017

    • 著者名/発表者名
      紅林亘
    • 学会等名
      非線形問題研究会
    • 発表場所
      ねぶたの家 ワ・ラッセ
    • 年月日
      2017-03-14 – 2017-03-15
  • [学会発表] Optimal Parameter Selection for Kernel Dynamic Mode Decomposition2016

    • 著者名/発表者名
      Wataru Kurebayashi
    • 学会等名
      2016 International Symposium on Nonlinear Theory and its Applications
    • 発表場所
      ニューウェルシティ湯河原
    • 年月日
      2016-11-27 – 2016-11-30
    • 国際学会
  • [学会発表] Koopman Operator Approach to Vital Sign Detection2016

    • 著者名/発表者名
      Yui Kawamura
    • 学会等名
      2016 International Symposium on Nonlinear Theory and its Applications
    • 発表場所
      ニューウェルシティ湯河原
    • 年月日
      2016-11-27 – 2016-11-30
    • 国際学会
  • [学会発表] 一般化位相モデルに基づいた自励振動子のシステム同定2016

    • 著者名/発表者名
      佐藤孝之
    • 学会等名
      非線形問題研究会
    • 発表場所
      日立製作所中央研究所
    • 年月日
      2016-10-27 – 2016-10-28
  • [学会発表] カーネル化された動的モード分解法のための最適なパラメータ決定法2016

    • 著者名/発表者名
      紅林亘
    • 学会等名
      非線形問題研究会
    • 発表場所
      機械振興会館
    • 年月日
      2016-06-13 – 2016-06-14

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公開日: 2018-01-16  

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