研究実績の概要 |
本研究の主たる目的は,非線形時系列解析技法を拡張することで,決定論的観点からヒトとヒトの相互作用データに潜む時空間的性質を明らかにすることである.これにより,テンポラル・ネットワーク上での感染症流行規模予測に向けた新たな解析フレームワークを提案することが主眼である. 当該年度では,その第一ステップとして,交付申請書に記載した研究実施計画に基づいて,(i)ネットワークの時間変動量定量化尺度を用いたヒトの相互作用データの決定論性検定法の開発,および (ii)ヒトとヒトの相互作用データに対する時系列解析手法の有効性検証を行った. 具体的には,研究代表者らが既に提案しているネットワーク構造間の差異を定量的に捉える手法を用いて,テンポラル・ネットワークの構造の時間変動の周期性を捉える手法を提案した. また,一般に公開されているヒトとヒトの相互作用データ(http://www.sociopatterns.org)に対して提案手法を適用し,その有効性の検証を行った.対象としたデータは2種類あり,一方は病院内での医療従事者および患者間のコンタクトを記録したデータ,他方は高校生・教員間のコンタクトデータである.いずれのデータもRFIDを用いて記録されている.これらのデータに対して提案フレームワークによる解析を行った結果,ネットワーク構造の時間変化の周期性を捉えることが可能となった.この成果の一部は Scientific Reports 誌に掲載されている(Y. Shimada, et al., Sci. Rep., Vol. 6, 34944, 2016).
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