研究課題/領域番号 |
16K16133
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
萩原 良信 立命館大学, 情報理工学部, 助教 (20609416)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 教師なし学習 / 知能ロボット / 確率的モデル / ベイズ / 概念形成 / マルチモーダル / 仮想環境 |
研究実績の概要 |
社会的マルチモーダル概念の学習を可能とするクラウド仮想環境(SIGVerse+L)の基本機能を構築した.具体的には,没入型デバイス(HTC Vive)を用いて実世界の被験者の仮想世界への没入と視線計測,アバターの歩行制御を行う機能を社会的知能発生学シミュレータSIGVerseに実装した.また,ROS(Robot Operating System)上で動作する音声認識合成エンジン(rospeex)を介した実世界の被験者の音声のテキストデータとしての収集をSIGVerseと統合して実施できる機能を構築した.これにより,被験者の仮想空間内での自由な移動と観測に基づく音声によるロボットへの概念の教示がオンラインで可能となった. 実際に構築したクラウド仮想環境(SIGVerse+L)を用いて三名の被験者の教示に基づく仮想ロボットによるマルチモーダル場所概念形成の実験を実施した.このとき,概念形成の計算論モデルとしては,画像,位置,言語のマルチモーダル情報からベイズ生成モデルによりボトムアップに場所概念を形成するマルチモーダル場所概念形成手法を使用した.同手法の提案も本研究実績の一部である.この結果,アバターを介して仮想世界に没入した被験者の発話と仮想世界でロボットが観測した画像,位置情報から人の認知に類似する場所の概念を形成し得る事を確認した. 研究の目的である“物体や場所についてのマルチモーダル概念を仮想世界で統合的に学習するための基盤技術の創成”に向けて28年度の研究計画を概ね順調に進めている状況である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
28年度前半は,“没入型インタフェースを伴うクラウド仮想環境(SIGVerse+L)の構築”を実施する計画であった.進捗状況として,実世界の被験者の音声,視線,移動動作を仮想世界のアバターに反映する没入型インタフェース(HTC Vive)とマルチモーダル情報に基づく人からの概念学習を可能とする対話機能(ropeex)のSIGVerse への実装を行った.一部で予定していたデバイスと異なるデバイスを使用する変更はあったが,研究計画への影響はなく,計画通りにクラウド仮想環境(SIGVerse+L)の構築を終えた. 28年度後半は,“社会的マルチモーダル概念の形成”を実施する計画であった.進捗状況として,構築したシステムを用いて三名の被験者からの教示に基づくマルチモーダル場所概念を形成し,異なるユーザからの教示によるマルチモーダル概念の知識統合を行った.使用した計算論モデルは,Multimodal LDAを場所概念の形成に応用したものであり,仮想環境の構築と並行して計算論モデルの推敲も進んでいる.28年度は,全体として概ね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
29年度は予定通り,“仮想空間と実空間の間の知識転移のインタフェースの構築”,“社会的マルチモーダル概念学習におけるSIGVerse+Lの有用性の検証実験”を実施する予定である.知識転移のインタフェースは,SIGVerseと実世界ロボットで共有に利用されるミドルウェアであるROSによって実施する予定である.既に知識転移の計算論モデルの基礎部分は形成済みであるので,これに基づいてROSノードを設計する事で達成可能である.また,SIGVerse+Lの有用性の検証実験は,本年5月に実施されるRoboCup Japan Open @Home Simulation Leagueの参加機関の協力を得て実施する.同リーグでは,SIGVerseがシミュレーションプラットフォームとして使用されており,参加機関との協力体制が確立されている.研究計画を遂行する上での課題としては,本システムの基礎となるシミュレータであるSIGVerseのバージョンアップによる開発環境の変化があったが,28年度にバージョンアップ後のSIGVerseへのソースコードの移行を概ね終えており,対応済みである.
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次年度使用額が生じた理由 |
執行予定の動画編集ソフトの執行を行わなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
動画編集ソフトの購入費として執行する。
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備考 |
(1)場所概念転移学習の実証実験を実施するRoboCup@HomeのチームWebページ (2)研究者個人のWebサイトでの本研究の紹介ページ
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