本研究の目的は、編集ベースの類似検索手法の提案、および、編集作業時のユーザ要求を反映させた検索アプローチによる心象に基づく類似検索の有効性を明らかにすることである。当該年度は、①前年度課題として挙げられたテクスチャがもたらす心象への影響について取り組み、続いて②3次元形状への拡張に向けたデータ分析を行った。さらに、より柔軟な編集手法を開発するため、③新たな編集ツール制作を行った。 ①については、シグモイド関数によりマルチレイヤ―化したテクスチャ画像からLocal Binary Patternを抽出することで、従来の類似度より優れた性能を示した。これをテクスチャ検索手法に取り組むことで、シンプルなテクスチャであれば、極めて類似した画像であっても、約7割の探索成功率となった。 ②については、前年度に続き3次元拡張に向けた心象に関する調査を実施した。前年度のラッピングにおける装飾に関する調査の知見を活用して、水引の結びを対象とした印象調査を行い、次元縮小手法であるUMAPとクラスタリング手法であるHDBSCANにより調査結果を可視化した。 ③については、3次元拡張に向けて、より柔軟な編集手法が必要となったことから、新たな編集ツールの開発に取り組んだ。本ツールは、ベクタ型とラスタ型両者の利点を持つツールであり、ユーザの軌跡に応じてブロブを連続的に配置し、Shugrinaらが報告した先行研究に基づくブロブ同士の自動連結処理を取りいれたペイントツールである。これは、自由にブロブを編集できるため、3次元拡張も容易であり、本年度はスクラッチアートのペインティングツールとして本ツールを評価した。その結果、ユーザの高い満足度を得ることができた。 以上、3点については研究の成果が得られたものの、最終目標である3次元ツールの開発までは着手できなかった。
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