これまでの「研究1:多感覚に共通する印象次元の抽出」および「研究2:PCCSにおける色の知覚的明度、彩度空間の再検討」を通して、調和色の選択傾向を変数として香りや音楽を分類した場合に、調和色が類似する香りや音楽はその印象も類似することが示された。また、その背景として印象次元と色の属性の関係性が明らかとなった。色、香り、音楽に共通する印象次元として、SD法の印象評定値に対する因子分析の結果、4つの因子が得られている。また、VAS評価による心理的な色の明るさ、あざやかさに対して主成分分析を用いた次元統合を行った。ここで得られた心理的な明るさとあざやかさの統合次元を”Brilliantness”と命名した。ここで印象次元と、色の明るさ、あざやかさとの関係性に着目すると、特に因子1、2との対応関係が見られ、統合次元である”Brilliantness”は両印象次元と高い対応関係が示された。 「研究3:印象を表象する共通概念として色による他の感覚の整理およびデータベースの構築」として、色を用いた香りおよび音楽の表現を行った。専用のアプリケーションを作成し、提示された香りおよび音楽の刺激に対して、それらを色によって表現する心理実験を行った。「研究1~3」の結果をデータベース化し分析結果を参照できるアプリケーションを作成した。さらに、色を用いた他の感覚の評価実験として、実験参加者が求める香りのイメージを色で表現した場合に、上記のデータベースを参照して最も近い香りを提案する再認実験を行ったところ、約70%の精度で実験参加者が求めたイメージの香りをピックアップできることが示された。
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