研究課題/領域番号 |
16K16140
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
田中 一晶 京都工芸繊維大学, 情報工学・人間科学系, 助教 (70721877)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ヒューマンセンシング / ヒューマンコンピュータインタラクション |
研究実績の概要 |
個人のものづくりにおいて,作業に熱中している時には見守り,行き詰って不安を感じている時にはアドバイスをする等のものづくり支援システムを構築するため,ものづくりの共同作業中の振る舞いから,ラッセルの円環モデルに基づいた8感情(喜び/不快,驚き/眠気,熱中/退屈,満足/不安)の推定をラバン行動分析に基づいて試みた.まず,モーションキャプチャセンサで取得した作業者の身体動作から次の3つの特徴量を抽出した.Space:両手と頭の位置から成る三角形の面積,Weight:頭の上下位置,Time:手の速さの移動平均.これらの特徴量を基に決定木を用いてその時々の感情状態(本人によるラベル付けを真値とする)の推定を行った.実験の結果,8感情の推定において約60%の正解率が得られた.また,快/不快または覚醒/眠気の2クラス分類においては共に80%を超える正解率が得られた.これらの結果は,他者による客観的な感情状態推定よりも高い正解率であった.この成果は2人の共同作業において得られたものであり,1人での作業では感情推定に十分な身体動作の変化は観察されなかった.このことから,人は相手がいなければ感情表出(情動的な振る舞い)を行いにくいと考えられるため,1人のものづくりにおいて感情推定に基づいた支援をシステムが行うためには,共同作業者としてロボットを用意し,そのロボットを通して感情推定や作業支援を行うことが望ましいと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2人での共同作業での感情推定は実施済みであり,論文が採択された.現在は人とロボットとの共同作業に関する実験を計画中である.
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今後の研究の推進方策 |
1人でのものづくりを感情推定に基づいて支援するシステムを構築する.作業者の感情表出を喚起するため,共同作業者の代替としてロボットを介して支援を行う.しかしながら,人はロボットに対して人間の相手のように社会的に接しにくいという問題が先行研究で報告されており,ロボットが存在するだけでは人は感情推定に十分な感情表出を行わない可能性が考えられる.まず,遠隔操作ロボットで作業支援を行う実験を実施し,ロボットが共同作業者となったとき,対面での支援と比較して感情表出に関する振る舞いがどのように変化するかを観察する.この観察を通して,ロボットがどのように振る舞えば,人は人間の相手と同じように感情表出を行うのかを明らかにする.また,感情表出を喚起する振る舞いや感情推定に基づく支援行動をどのように獲得・構築すべきかを検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年度に所属機関が変わったことにより,所属研究室の他の研究費によって被験者および実験補助の謝金を支払ったため次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度に所属機関が再度変わったが,こちらでは次年度使用額を活用し,本研究に関わる謝金を支出する.実験を同時並行して実施することで研究の推進を図る.
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