研究課題/領域番号 |
16K16141
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
竹之内 宏 福岡工業大学, 情報工学部, 助教 (50726734)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 対話型進化計算 / 視線情報 / カタログインタフェース |
研究実績の概要 |
本研究では,単独及び複数の商品ユーザの視線情報を用いて解候補を評価できる対話型進化計算システムの開発を目指し,対話型進化計算システムの新たな応用分野を見出すことを目的としている.研究2年目は,初年度に開発した対話型進化計算の解候補評価に視線情報を適用したシステムを用いて,複数人の被験者が同時に解候補を評価した場合の検証を行った.その結果,複数人で解候補を評価した場合でも,ユーザ全員がある程度満足のいく解候補を生成できることが確認された.これらの成果は,国内外の学会発表などで報告予定である. また,視線情報における特徴量(視線滞在時間や移動距離,視点位置など)を用いたユーザの嗜好推定についても取り組んでいる.具体的には,パターン認識手法の1つであるニューラルネットワークを用いて,ユーザが閲覧したデザインのうちどちらが好みであるか推定することを試みたが,明確な有効性は示されなかった.今後は,サポートベクターマインなど他のパターン認識手法を用いるなどして,さらなる検証が必要である. さらに,ユーザが単独で対話型進化計算システムを使用する場面を想定して,視線情報による解候補評価が可能なカタログインタフェースを提案するに至った.本インタフェースでは,ユーザは製品のカタログを自由に閲覧することで,解候補が進化していく.すなわち,ユーザのカタログ閲覧時の視線情報を計測し,それらの情報を基に解候補を評価し,ユーザがページをめくるタイミングで,ユーザの好みに合わせた解候補を提示しようとするものである.現時点では,基本システムの段階で留まっているが,今後は複数の進化計算手法を導入したハイブリッド手法による解候補探索などを取り入れるなど,基本システムの拡張に取り組んでいく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究計画は,1.視線情報を用いた解候補評価手法の開発(視線情報評価部),2.視線情報を用いた解候補評価手法の評価実験(視線情報評価部)であった. これら2項目について,研究当初は「提示された解候補が閲覧された時間」を用いて,閲覧時間が長いものがユーザにとって評価の高い解候補としていた.しかし,ユーザが閲覧時間が長い解候補は好みという判断だけではなく,興味があるというだけで長く見ていた可能性が懸念されることが分ってきた.このため,視線の滞在時間だけでなく,視線移動のパターンなど他の情報も用いた解候補評価手法の考案が必要である.そこで,ユーザの視線情報からユーザの嗜好を推定するために,ニューラルネットワークなどのパターン認識手法を用いた検証に取り組んできた.これまで明確な有効性は確認されていないが,今後も検証を続けていく必要がある. また,対話型進化計算の解候補進化の観点から考察すると,解候補評価に「提示された解候補が閲覧された時間」のみを用いた場合でも,解候補は進化することが基礎実験により確認されている.このため,「視線情報を用いた解候補評価手法の開発」とは別に,ユーザのカタログ閲覧時の視線情報を用いたカタログインタフェースの開発や現システムでの更なる評価実験なども並行的に行っている. これらの結果より,視線情報による解候補評価手法については,今後も検証の余地があるが,これらと並行して視線情報を用いたカタログインタフェースの開発などにも着手しており,「視線情報を用いた対話型進化計算システム」の実現に向けて前進しており,研究進捗状況としては「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の研究計画は,ユーザの視線情報を用いた対話型進化計算システムの開発である.研究最終年度となるため,当該システム構築を完了させること目標としている.具体的には,平成29年度に完成しえなかった視線情報評価部についての検証,視線情報を用いたカタログインタフェースの進化計算アルゴリズムの改良などを行っていく予定である. 具体的には,「視線情報による解候補評価方法」と「ユーザのカタログ閲覧時の視線情報を用いたカタログインタフェース」について,検証を進めていく.前者では,ニューラルネットワークだけでなくサポートベクターマシンなど他のパターン認識手法を用いたり,実験環境及び条件を改善していく必要がある.後者については,ハイブリッド進化計算アルゴリズムによる解候補探索を実現し,解候補の多様性を維持できるシステムを構築することを想定している. 評価実験についても,実験結果の統計的解析が可能になるよう20~30人程度の被験者を対象とし,行う予定である.また,本研究では,システムの使いやすさ(負担の少なさ)を目指しているため,この点についてもより詳細な検証を進めていくことを考えている.これまでは,アンケートによる回答と評価に要した時間からの分析であったが,さらなる工夫が見込まれる.
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度にアイトラッカーなどを集中して購入したため,平成29年度は装置の購入が必要なく,その結果残額が発生した.残額については,平成30年度の国際学会発表旅費やアイトラッカーなどの装置補填に充てる.
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