研究実績の概要 |
今年度は、RNAの構造・分子間相互作用の情報解析手法を中心に下記の3報の論文を発表した。 (1)RNAの2次構造の中で、最安定な構造だけではなく、準安定な2次構造を解析できる情報解析ツールを開発し、論文として発表した(Hagio et al.,BMC Bioinformatics, 19(Suppl 1):38, 2018)。 (2)RNAの高次構造を網羅的に調べる実験データ(icSHAPEやPARS等)から、複数回の実験で再現性のあるシグナルを抽出し、RNAの高次構造予測を高度化する手法を開発し、論文として発表した(Kawaguchi et al., BMC Bioinformatics 2019, 20(Suppl 3):130)。 (3)lncRNAと他RNA間の分子間相互作用予測について、配列の相補性だけではなく、各RNAの発現量や細胞内局在のデータを組み合わせることで、より合理的な相互作用を予測できるようにしたWebサーバーを構築し、論文として発表した(Fukunaga et al., Frontiers in Genetics (doi: 10.3389/fgene.2019.00462))。 また昨年から引き続き、次世代シーケンサーを用いた実験手法であるPAR-CLIPやSLAM-seq、TimeLapse-seqなどの塩基置換が多数存在する配列データから有用なシグナルデータ(PAR-CLIPの場合:RNA-タンパク質相互作用、SLAM-seqおよびTimeLapse-seqの場合:RNAの分解速度・半減期)を効率的に取得する解析技術を開発し、現在解析結果の評価を実施している。この解析技術により、今までの解析では発見できなかったRNA-タンパク質相互作用についての情報を収集するだけではなく、RNAの合成・分解速度、RNAの高次構造、RNAの転写後修飾等を調べた次世代シーケンサー由来配列データから、より多くの有用な情報が得られることが期待される。
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