がんは一つの正常な細胞が遺伝子変異を蓄積しながら進化し、異常増殖することで発生すると考えられている。この遺伝子変異の組み合わせは患者さんごとに異なり、また患者さん一人の中でも、異なる遺伝子変異の組み合わせを持つサブクローンと呼ばれる細胞集団が存在することが明らかとなっている。がんの治療抵抗性と再発性は同じがんの中に含まれる一部の抵抗性を示すサブクローンに一因があり、もともと少数であった抵抗性のサブクローンが、薬剤投与という環境変化に適応するために進化・増殖することで抵抗性を獲得すると考えられている。そのため、治療背景の異なる患者さんのサブクローン進化の構造がどのように異なるのかを理解することはがん治療において重要である。
本研究では、一検体のがんから複数の異なる部位の遺伝子変異を次世代シークエンサーを用いて調べることで、検体内においてサブクローンがどのような過程 で進化したかを推定し、多数検体から得られるサブクローン進化の違いを定量化することで、対象群をサブクローン進化の類似性に基づきクラスタリングする解 析手法を開発した。 各グループと治療背景との関連性を調べることで、サブクローン進化と治療反応の関係性を調べることが可能である。実際に8名の淡明細胞腎細胞がんおよび 11名の非小細胞肺がんを本手法により解析した結果、同定したサブグループが再発性と薬剤感受性の特徴を持っていることが明らかにした。
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