研究実績の概要 |
これまでに構築した3種類のパターン認識手法(自己組織化マップ、サポートベクトルマシン、ベイズ正則型ニューラルネットワーク)による、基本的検査項目(γ-GTP, LDH, Na, K, 白血球分画(好中球数、好酸球数、単球数、リンパ球数))の組み合わせからクッシング症候群を予測するモデルを統合した簡易的なスクリーニングインターフェイスのさらなる改良を進めるとともに、まずは従来の研究により得られていた過去の病院内科外来受診者2,664名の基本的検査データ(なお、レセプト病名から調査したところ、この受診者中にクッシング症候群の患者は存在しなかった)を入力することで、クッシング症候群以外の背景疾患を持つ患者がどの程度偽陽性と判定されるのかを推定する予備的な実験を行った。 本予測モデルに関するこれまでの検討(健常群とクッシング症候群患者についてLeave-One-Out法により算出)から得られていた、感度84%、特異度98%を示すポイントを予測率閾値として定めた場合、閾値以上を示した外来受診者は全体の10%程度(302名)であった。この外来受診者予測結果と、モデルの学習に用いたデータにおけるLeave-One-Out予測結果を併せてROC曲線を描画したところでは曲線化面積が0.950と極めて高い精度が得られたものの、やはり健常対照群において得られていた特異度から比べると、様々な背景疾患を持つ患者については精度が1割程度落ちることが確認された。クッシング症候群の罹患率は低く、新規発症は年に100例程度と推定されていることから、今回の検討から得られた本モデルの現在の精度ではまだ陽性的中率に劣る可能性が高い。このため、本手法により大規模にスクリーニングを行う場合には、やはり他の背景疾患を持つ群についても特異度をさらに向上させる必要があると考えられた。
|