研究実績の概要 |
脂質ラフトは,細胞内の情報伝達プラットフォームの役割を担い,細胞内輸送や免疫応答などの機能発現に関与する.病態の発生原因になるとされるが,その動態はまだ明らかではない.そこでラフト上に存在する各種のシグナル受容体に注目することで,シグナル伝達時の脂質ラフトの動態を明らかにしようとする研究が行われている. 本研究では,近年確立された環境感受性の標識ラベルで,受容体周辺の膜環境のみを標識したタイムラプス画像を大量取得している.取得画像を用いて,インスリン刺激に対する受容体周辺の膜環境変化を画像解析することが,本研究の目的である. 今年度までに,580nm~630nm付近の短・高波長それぞれ8チャンネルのタイムラプス画像から,受容体周辺領域のみを自動的に領域分割することに成功した.取得画像は対象の移動や蛍光退色に伴う時間変化などによって,極めてノイズが多い.そこで本研究では,我々が先だって研究・開発を進めている画像処理法の性能評価システムを用いて,対象の時間変化やノイズにロバストな領域分割法を検討した.その結果,Difference of GaussianフィルタやK-means法等を組み合わせた領域分割法を提案し,現在までに約30万枚の画像に対して自動領域分割に成功した.分割領域に対し,膜の固さを表す指標であるGP値を求め,インスリン刺激前後のGP値変化を統計解析した.これらの結果のうち,画像処理に関わる方法論については画像センシングシンポジウムで発表した.また,本研究で提案した画像処理法の一部を,他研究課題に適用した成果は,欧文ジャーナル誌に掲載された.本研究の生物科学系の成果は,共同研究者がSwiss National Center of Competence in research(NCCR)でポスター発表を実施した.また次年度に2学会での発表が確定している.
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