(1) 教科書レベル知識の構造的記述 昨年度の成果を整理し,直接介護行為8種類(排泄介助,入浴介助,移動介助,移乗介助,更衣介助,体位変換,口腔ケア,食事介助)について,教科書レベル知識の構造的記述を行った.以上の構造的に記述された知識を構造化マニュアルと呼ぶ.上記の構造化マニュアルの構築には,介護分野で用いられる教科書5点と介護分野の専門家の助言のもと構築を行った.構築結果は,Resource Description Frameworkと呼ぶWebの考え方に基づき形式化し,公開を予定している. (2) 現場固有知識の構築方法の確立 (1)で構築した8種類の基本構造化マニュアルおよび昨年度の成果である「知識発現」方法論を用いて,より大規模に固有構造化マニュアルの構築可能性について検証を行った.検証の結果,知識発現の方法論自体の精緻化と固有構造化マニュアルの構築ができた.方法論として,構築範囲の規定,構築体制の作成,スケジュールの計画,追加・削除箇所の選定,知識モデルに沿った整形,固有構造化マニュアルの内容確認といったステップを踏む必要があるが,本検証を通して,そのステップの詳細を明確化した.構築された固有構造化マニュアルについては,当該法人の新入職員研修に用いられることとなった. (3) 大学教育への展開 当初は予定していなかったが,知識発現方法論を用いた大学教育支援についても研究成果が得られた.介護分野における従業員を学生に,業務知識を学生が得た気づき,基本の構造化マニュアルを授業内容に変換して知識発現を用いる.結果として,体系立てられた授業内容に沿って学生が振り返り結果を記述できた.協力を得た教員の主観として,従来よりも授業内容に沿った気づきを表出できただけでなく,他の方法との比較も通して効果を確認した.
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