研究課題/領域番号 |
16K16162
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
照山 絢子 筑波大学, 図書館情報メディア系, 助教 (10745590)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ヒューマンライブラリー / マイノリティ / 対話 |
研究実績の概要 |
・昨年度に引き続き国内にて開催されているヒューマンライブラリーにて参与観察調査をおこない、「本」および「司書」の方々へのインタビュー調査を実施した。特に当該年度においては日本ヒューマンライブラリー学会という関連団体の設立を受けその理事となり、年次大会の運営などにも携わったことから、国内における主要な主催者のネットワークに直接かかわることができ、豊かなデータを得ることができた。 ・また、自助グループ、哲学カフェ、ロボットを用いたコミュニケーションなど、同様にさまざまな形態でオルタナティブな語りを扱う催しにおいて参与観察をしたり、関連する分野の研究者と意見交換をするなどして、語りをめぐる実験的試みとしてのヒューマンライブラリーの特徴と可能性について意見交換をおこなう機会を多くもった。 ・成果報告として、アジア社会心理学会、異文化間教育学会(研究協力者:菅原早紀)などでこれまでの調査結果を報告した。前者では日本におけるヒューマンライブラリーの特徴を(1)「いま・ここ」性(空間的・時間的限界)、(2)パフォーマティビティとメタファーの効用、(3)親密さ、とまとめつつ、「公共に開かれていること」などをめぐる議論など、日本のヒューマンライブラリーに特有に問題意識と思われるものを指摘した。後者では主に「本」へのインタビューに基づき、ヒューマンライブラリーへの参加が「本」にもたらす効果を見出し、「読者」への啓発に限定されないヒューマンライブラリーの可能性を、語るという行為の中に見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通り、国内における調査はおおむね順調に進展しており、成果の公表にも着手しはじめている。一方、28年度から持ち越している海外調査についてはなかなか足掛かりがなく、実施できていない。当初予定よりは規模を縮小することも検討しているが、国内調査に主眼を置きつつも相対的な視点を持つために海外調査は必須と考えており、最終年度で実施したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
・今後も引き続き国内において参与観察調査、インタビュー調査を実施する。特にこの1-2年で新規に実施されるヒューマンライブラリーは増加傾向にあり、またマスメディアでの注目度も上がってきている。こうした傾向を受け、28、29年度でラポールを築いたところにとどまらず、フィールドを広げながら調査を続ける。 ・先述の通り、積み残している課題として海外調査を実施するつもりである。 ・引き続き成果公表に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に海外調査をおこなうつもりであったものの、これが実現しなかったことが主な理由となった。物品費等その他の費目についても当初想定よりも低く抑えることができた。次年度の調査と成果報告に使用する計画である。
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