研究実績の概要 |
我々は、基本コミュニケーションが困難である発達障害児・者を対象に「自動SST」と題して、ソーシャルスキルトレーニング(以下、SST)の過程の一部を人間と対話エージェントの会話によって自動化する研究を進めてきた。システムは、音声・言語・画像情報を認識し、ユーザに即時のフィードバックを行う。システムの設計は、従来のステップ方式の枠組みに沿っており、2種類の課題の選定、モデリング、ロールプレイ、フィードバック、正の強化を含んでいる。課題として、人に話を伝えるスキルに加え、話を聞くスキルを取り上げた。 話を伝えるスキルに関しては、10 名の自閉スペクトラム症者 (年齢7-19歳,男性)が本研究に研究協力者として参加した。実験の過程としては、まず初めに、研究協力者が面識のない大人 1 名に向かって話を行う様子を、PCの内蔵カメラにより収録した。その後、自動ソーシャルスキルトレーナを使用し、トレーニングを進めた。最後に、初めと同様に面識のない人に向かって話を伝える様子を動画収録した。収録した動画に対しての臨床心理士1名による印象評価を行なった。話を聞くスキルに関しては、27名の大学院生 (女性6名、男性21名, 年齢平均25.1歳)が研究協力者として参加した。対話エージェントが話している時の、協力者の聞いている様子を収録し、臨床心理士2名による動画評価を行なった。 話を伝えるスキルに関して、全ての研究験協力者で事前と事後でスキルが不変 ,もしくは向上している (不変2名、向上8名)ことを確認した。事話を聞くスキルに関しては、うなずきの回数および発話の回数を合計した値と、聞くスキルの評価値に相関係数0.59の関係性が見られた。また聞くスキルの線形推定モデルを作成、交差検証を行い、実測値と予測値において相関係数0.47 (p<0.05)で予測が可能であることを示した。
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