研究課題/領域番号 |
16K16180
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
北原 鉄朗 日本大学, 文理学部, 准教授 (00454710)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 音楽 / 相互予測 / 相互適応 / 統計モデル / 予測モデル / 旋律予測 |
研究実績の概要 |
本研究では、音楽の相互予測に基づく相互適応モデルの構築を目的としている。今年度は、音楽の統計的モデル化に焦点を当て、以下の研究を行った。 (1) ユーザが描いた旋律概形に基づいて即座に旋律を生成して演奏する即興演奏支援システムを実現した。このシステムでは、ブルース約50曲の旋律を学習した統計モデルに基づき、遺伝的アルゴリズムを用いて旋律を生成する。 (2) 音楽家の演奏スタイルは、同じ音楽家であっても時代的背景などによって変遷するのが普通であるが、そうしたスタイルの変化は定性的に語られることはあっても、定量的な分析はほとんどされていなかった。そこで、特定の音楽家の旋律の特徴が時代とともにどのように変化するかを、パターン認識的アプローチを用いて定量的に分析する手法を開発した。 (3) リカレントニューラルネットワーク(RNN)、特に、LSTMを用いたRNNは時系列のモデル化手法として大きな注目をあびている。これは局所的な依存関係(短期記憶)だけでなく大局的な依存関係(短期記憶)も学習できるからである。LSTMを用いてソプラノ・アルト・テノール・バスからなる四声体和声を学習したところ、ソプラノのみの旋律に適切に他のパートを付与できることを確認した。 (4) 旋律には階層的な特徴があることはよく知られており、旋律の階層的構造を木構造として表現する方法は以前より多く行われている。しかし、そのほとんどは音符列表現が出発点となっている。しかし、音楽の認知の観点からは、人間が必ずしも旋律の1つ1つの音符を認識しているとは限らない点から、より旋律の大局的特徴をとらえた表現が重要である。本研究では、ウェーブレット変換を用い、音符列表現に依存しない旋律の木構造表現を提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、まず即興演奏データの採集を行うこととしていたが、手持ちのデータおよびWebにて入手可能なデータで音楽の予測モデルの構築をすすめ、下記の結果を出すことができた。 (1) ユーザが描いた旋律概形に基づいて即座に旋律を生成して演奏する即興演奏支援システムを実現した。 (2) 特定の音楽家の旋律の特徴が時代とともにどのように変化するかを、パターン認識的アプローチを用いて定量的に分析する手法を開発した。 (3) LSTMを用いてソプラノ・アルト・テノール・バスからなる四声体和声を学習したところ、ソプラノのみの旋律に適切に他のパートを付与できることを確認した。 (4) ウェーブレット変換を用い、音符列表現に依存しない旋律の木構造表現を提案した。 これらは、音楽の相互予測モデル構築の足がかりとなるものであり、概ね順調な進捗を出せたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度構築した統計モデルによる旋律のモデル化をベースに、音楽の相互予測モデルの構築を行う。また、相互予測モデルの評価に不可欠な実際のジャムセッション(演奏)のデータの採集も並行して行う。これらを同時並行的に行い、前者のモデルを後者のデータで評価し、随時前者のモデル化の改善に用いることで、効果的な研究開発を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた演奏データの採集を後回しとして、手持ちのデータおよびWebにて入手可能なデータを用いた検討を先行させたため。
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次年度使用額の使用計画 |
計画していた実験データの採集を次年度に行う。
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