本年度は、本研究の計画に従い、以下の2つの点について検討を進めた。 (1)ユーザビリティの改善 アニメーションとゲームの制作を行っている会社と協力し、昨年度に実装した提案手法のプログラムを実際の映像コンテンツ制作のプロジェクトに組み込み、CG制作を専門としているユーザからの意見をもとにユーザビリティの改善を行った。まず、プログラム開発を担当するユーザからの意見をもとに、映像毎に制作されるシェーダプログラムから提案手法を少量のコード記述で使用できるように提案手法をライブラリとして整理した。また、アニメーション制作を担当するユーザからの意見をもとに、これまで個別に設定を行っていた消失点移動と遠近感強弱調整を統合して設定項目を単純化し、さらに、遠近感強弱調整をユーザが普段から使用している画角の単位で設定できるよう変更を行った。 (2)映像制作用シーンデータでの評価と影・ハイライトとの整合性の検証 映像制作のCGでは、シーンデータ内には人物、ライト、背景などが混在する。このようなシーンを作成して検証したところ、提案手法による形状変形によって従来の照明計算アルゴリズムとの間に不整合が生じてしまい、影やハイライトの位置にズレが生じることが判明した。そこで、影・ハイライトが正しく描画されるように提案手法に合わせた照明計算のプログラムを実装した。ここでは、提案手法を適用したオブジェクトが他のオブジェクトに影を投影する計算の場合は形状変形前の座標を用いるといったように、形状変形の前後の値を両方とも保持して使い分けを行っている。 本研究の今後の計画としては、提案手法を形状の複雑さが異なるモデルデータに対して適用した際の影・ハイライトへの影響の検証、アニメーション以外の絵画表現で用いられるパース技法への応用が挙げられる。また、本研究の成果をまとめ、国際会議への投稿・発表を予定している。
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