研究課題/領域番号 |
16K16183
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
坂本 陽介 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (50747342)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | エアロゾル / エイジング / ヒドロキシラジカル / ヒドロペルオキシラジカル / レーザー分光法 / 反応速度論 |
研究実績の概要 |
大気エアロゾル粒子は大気中でのエイジングによりその気候影響、健康影響の効果を変化させる.HOx(OH及びHO2)ラジカルの取り込みはエアロゾルエイジングの主要なプロセスであるため、大気エアロゾル粒子の影響評価にはその定量的な評価が必要不可欠である.現状ではHOxラジカルの取り込み測定はほぼ標準粒子に限定されており、実大気エアロゾルへの取り込み速度をいかに評価するかが課題となっている. そこで本研究ではHOxラジカル取り込みによるエイジング過程が大気エアロゾルによる気候及び健康への影響にどのように変化を与えるか定量的に評価することを最終目的として,大気エアロゾルの主要なエイジング過程の一つであるHOxラジカルの実大気エアロゾル粒子への取り込みの速度のリアルタイム直接測定システム構築を行っている. 当該年度では実施計画に従い、レーザーポンプ・レーザー誘起蛍光法を用いたエアロゾル粒子へのOHラジカル取り込み速度のリアルタイム直接測定システムの構築を行い、標準エアロゾル粒子(NaCl粒子、硫酸アンモニウム粒子)へのOHラジカルの取り込み速度の直接測定を世界で始めて達成した。その結果NaCl粒子及び硫酸アンモニウム粒子OHラジカルの取り込みは、気相OHラジカルの濃度に依存することが新たに判明した。OHラジカルの濃度が高い領域での測定では当該装置の測定結果と過去の間接測定法による文献値は良い一致を示した。一方でOHラジカルの濃度を下げた場合、取り込み係数の値は最大で3倍程度になった。この結果は過去の報告がOHラジカルの取り込み速度を過小評価していること、及び実大気濃度を反映する領域での測定の必要性を示唆している。 得られた結果を基に、国内学会(第22回大気化学討論会、北海道大学、札幌)および国際学会(International Conference on Aerosol Cycle 2017、リール大学、フランス)において口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の実施計画は、標準エアロゾル試料へのOHラジカルの取り込み速度の測定,及び得られた取り込み係数γと過去の文献値を比較による装置妥当性の確認である. 当該年度では実施計画に従い、レーザーポンプ・レーザー誘起蛍光(LP-LIF)法を用いたエアロゾル粒子へのOHラジカル取り込み速度のリアルタイム直接測定システムの構築を行い、標準エアロゾル粒子(NaCl粒子、硫酸アンモニウム粒子)へのOHラジカルの取り込み速度の直接測定を世界で始めて達成した。その結果NaCl粒子及び硫酸アンモニウム粒子OHラジカルの取り込みは、気相OHラジカルの濃度に依存することが新たに判明した。過去の文献地との比較により、当該装置の妥当性を確認した。さらにOHラジカルの濃度を下げた場合、取り込み係数の値は最大で3倍程度になった。この結果より過去の報告がOHラジカルの取り込み速度を過小評価していること、及び実大気濃度を反映する領域での測定の必要性が判明した。 OHラジカル取り込み測定と同時に、次年度の実施計画であったHO2ラジカルの取り込み測定についても測定システムの構築を開始した。現在結果の分析と、過去の文献値との比較を行い測定の妥当性を確認している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度における実施計画は1)標準エアロゾル試料へのHO2ラジカルの取り込み速度測定システムの構築および文献値との比較による装置の妥当性の確認、2)テフロンバッグチャンバー内で生成させた複雑な組成を持つ二次有機エアロゾルへのHOxラジカルの取り込み速度の測定、および3)LP-LIF法による実大気エアロゾル粒子への取り込み観測の可能性の評価である。 現状では特に大きな問題点は無いため、次年度において実施計画の大きな変更は無いが、初年度のOHラジカル取り込み測定において、より濃度の低い条件での測定が今後の取り込み測定実験において重要であることを新たに発見したため、測定装置の感度向上も上記計画に加え行う予定である。
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