研究課題/領域番号 |
16K16184
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研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
對馬 あかね 総合地球環境学研究所, 研究部, プロジェクト研究員 (70757682)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アイスコア / 北極域 / 古気候復元 / 水安定同位体比 |
研究実績の概要 |
初年度は、レーザー分光同位体比分析装置(PICARRO)を用いて、アラスカ中央部に位置するアラスカ山脈のオーロラピーク近傍で掘削された浅層アイスコア中のδ17O および 17O-excess の分析を行い、水安定同位体比 5 成分 (δ18O,δD、d-excess、δ17O および 17O-excess) の統合解析から変動要因を特定し、アイスコア中のδ17O および 17O-excess の動態解明を行うことを目的とした。本研究ではレーザー分光同位体比分析装置の持つメモリー効果などを考慮した測定方法を用いており、一度に測定できる試料数が限られた。そこで、先行研究から、アイスコア掘削地点への水蒸気の輸送経路が大きく変化したと考えられる1760年ごろに着目し、試料の分析を行った。その結果、1800年から1723年の約78年間の高精度なδ17Oおよびδ18Oのデータを取得でき、両者から17O-excessを算出してその変動傾向を解釈した。アラスカのアイスコア中の17O-excessはd-excessとおおよそ逆の変動を示すことがわかり、このことから、アラスカの西側から水蒸気が流入すると、アラスカの南側から水蒸気が流入する時よりも17O-excessが低くなる傾向を持つ可能性が示唆された。北極域のアイスコア中の17O-excessのデータは現在ほとんど存在しないため、初年度に得られたデータは非常に貴重な知見となる。 さらに、アイスコア中のδ17O および17O-excess の動態解明のためには、圧密されて氷になる前の積雪中の17O-excessが、どのような気候条件下でどのような変動傾向を持つのかを理解する必要があると考え、氷河の存在する高標高域にて積雪試料の採取も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画に沿って、アイスコア中のδ17O および17O-excessの動態解明のため、アラスカで採取されたアイスコアをレーザー分光同位体比分析装置を用いて分析し、その結果、非常に高精度なデータを78年分取得することができた。現在、データの解釈のための解析が進んでいる。さらに、アイスコアデータの解釈に必要な積雪試料の採取も行った。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に得られたデータの統計解析などを行い、新たな水安定同位体比の動態解明を行う。さらに、グリーンランドで掘削されたアイスコアの水安定同位体比の分析を進めて、北極域の古気候復元に取り組んでいく。データの取得を進めつつ、分析精度を向上させる実験にも引き続き取り組んでいきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は分析精度向上のため大型物品を購入予定だったが、現在、購入物品の規模や配置など様々な環境下でのデータの取得を行い、得られたデータを基に検討を重ねている最中であることから、ひとまず当該年度内での大型物品の購入を延期した。
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次年度使用額の使用計画 |
初年度に引き続き、分析データの高精度化を目指す。そのために、当該年度に使用しなかった予算を次年度に使用し、大型物品を購入する予定である。さらに、本科研費採択直前に研究代表者に勤務地の移動が生じたので、国立極地研究所にて分析を行うために、当初の計画には入れていなかった、出張旅費がかかることとなったので、その旅費としても使用する。
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